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木造建築のネツト記事
ID :  13927
公開日 :  2009年 11月 2日
タイトル
[探訪 讃岐の茶室/香松
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新聞名
四国新聞
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元URL.
http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/culture/article.aspx?id=20091103000093
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元urltop:
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写真:
 
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1945(昭和20)年7月4日、空襲に見舞われた高松で、奇跡的に火災から免れた建物がある。明治期の後半より端岡村(現高松市国分寺町)の村長を務めた瀬尾幸太郎氏が、同家の浜ノ町別邸として普請し た邸宅である。高い塀の外側に、今は珍しい駒(こま)寄せが現在も残る。戦前の分限者(ぶげんしゃ)の風流を伝える貴重な遺構である。
 樹齢500年の杉の高級材「蓮板(はすいた)」を塀や建物の欄間など随所に配し、全体の統一感を出しながら、部屋ごとにも銘木が吟味された見事な造りである。戦後、国際観光旅館「可川(かせん)」の旧館として一世 を風靡(ふうび)した。また、武者小路千家先代家元有隣斎宗匠の世継ぎ茶事の舞台にもなったことで、ご記憶の方も多いのではないか。
 邸内に巡らされた外回廊に飛び石のようにはめ込まれた緑釉(りょくゆう)や絵変わりの敷き瓦は一見に値する。いずれも宝暦年間(1751―64年)に作られた「理兵衛焼」である。
 さて、回廊から大きな円窓越しに露地を隔てて、四畳半本勝手下座床の茶席がある。戦前に母屋と廊下続きで増築されたようだが建築年代は定かではない。その後、何度か改築された形跡も残る。
 茶室の床柱は赤松の皮付き、床框(とこがまち)は正面がクリのなぐりで天のみ真塗(しんぬり)、落とし掛けはキリ。台目幅の室床(むろどこ)である。床の左手前に躙口(にじりぐち)を切る。天井はスギの正目で竿(さお )は皮付きの赤松。床正面に位置する貴人口の上はスギの掛け込み天井。落とし掛けはゴマ竹。その外の濡縁(ぬれえん)を覆う広い庇(ひさし)は、印象的である。スギの皮葺(ぶ)きを竹で横に押さえ、さらに押さえ竹 を四つ目垣に組んで蕨縄(わらびなわ)で結び、侘(わ)びた感じをうまく工夫している。この庇の上に「香松」の扁額が掛かる。金子元知事の命名だそうだ。
 東京在住のご当主は、この文化遺産が有効に利用できるようにと現状維持に心を配る。将来の活躍が楽しみな茶室である。