ID :
11723
公開日 :
2009年 4月30日
タイトル
[古代の技「千年の釘」再現
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://osaka.yomiuri.co.jp/awoniyoshi/aw90430a.htm?from=iphoto
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元urltop:
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写真:
写真が掲載されていました
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千年持つ釘を追い求め、再現してきた。奈良・薬師寺の西塔、大講堂や平城宮大極殿正殿の復元、室生寺五重塔(国宝)の修復などで数多く使われ、古文化財や伝統建築の保存・復元を陰で支える。
鍛冶屋に生まれ、9歳でハンマーを握るが、高卒後に上京。日本橋の老舗刃物店「木屋」に勤めて仕入れを担当し、鉄の素晴らしさを見直す。
「人生が変わった。仏縁ですよ。鍛冶として夢を持てました」。38年前、法隆寺を修理し薬師寺の白鳳伽藍(がらん)復興を担う宮大工・西岡常一棟梁(とうりょう)が来店し、意気投合。親交が始まる。鍛冶屋を継いだ兄が亡
くなっており、西岡棟梁の「技術があれば、どこでも生活できる。両親の面倒を見なさい」との助言で帰郷。包丁づくりの合間に、古代の大工道具、槍鉋(やりがんな)や手斧(ちょうな)を復元し、金堂再建に貢献した。
続く西塔の再建で、釘の製作を頼まれた。「千年持つ塔だから釘も」と西岡棟梁。硬く粘りがあってさびにくい古代釘は、鉄の純度の高さだと発見する。東北大の井垣謙三名誉教授(87)と日本鋼管(現JFEスチール)が鉄
材を開発し、提供してくれた。
それを炉に入れ、何回も取り出してハンマーでたたく。温度加減の難しい鍛造の末、薬師寺に3万本を納め、大極殿では長さ75センチの大釘も作る。「千年の釘」は千年の材にしっかり入って芯を避けて食い込む適度
な硬さを持つ。微妙な膨らみと荒々しいハンマー痕を持つ釘は材に密着して抜けにくい。関係者は、白鷹さんの高度な鍛造技術が生かされた成果と評価する。
奈良・唐招提寺の国宝・千手観音立像などの修理で白鷹さんの釘3000本を使う美術院国宝修理所の小林才治・現場主任も「古代の釘の成分に近く、長持ちするだろう。仏像修理にふさわしい柔軟性と強度を兼ね備え
たシャープな仕上がりで、物を傷めない素晴らしい釘です」とみる。
受賞は、居間に掲げた西岡棟梁の写真に報告した。3年前に亡くなった妻の璋子(あきこ)さんには、5月10日の命日に墓参りして伝える。
「釘作りは、歴史に参加する喜びがある。『技法の底に流れる精神をくみ取って精進を』とのオヤジ(棟梁)の言葉をいつも肝に銘じています」と真っ白なひげをなでた。