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ID :  9948
公開日 :  2008年 12月16日
タイトル
[木下工務店 なぜ映画に出資? 身近に感じてもらい、意外性で宣伝効果
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新聞名
東京新聞
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元URL.
http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2008121702000096.html
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元urltop:
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写真:
 
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映画「まぼろしの邪馬台国」(東映)や「パンダフルライフ」(松竹)のクレジットに「木下工務店」の名前を見て首をかしげた人も多いのではないか。映画製作への出資はテレビ局や出版社などがほとんどで、異 色の参入は業界でも話題になっている。社長の映画好きが高じたとのウワサもあるが真相は-。 (石原真樹)  同社は住宅建築やリフォームなどを手掛ける工務店で、本社は東京・新宿。資本金四億五千万円、従業員千二百五十人。実は映画以外にも、音楽イベントやフィギュアスケート大会に協賛するなどしている。
 初めて映画に出資したのは「I am 日本人」(2006年、ギャガ・コミュニケーションズ)。その後「未来予想図~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~」(07年、松竹)などに続き、「まぼろし~」以降ほぼすべての東映作品に出資 を決めた。自社製作にも挑戦、公開中の「ぼくのおばあちゃん」が第一作だ。
 「映画をもっと広めたいんです」。木下直哉社長は八歳から映画館に通い始め、これまでに六千本以上映画を見たという筋金入りの映画好き。「あのシーンのこの表情がいい、って思えるような作品が、いいですよねえ」 と映画の話になると顔がほころぶ。最近良かったのは「おくりびと」や「歩いても 歩いても」だとか。
 社名と同じ名字だが、一族ではなく、不動産会社を経営していた〇四年にM&Aを行い社長となった。
 「I am~」への出資は知人の紹介で「監督と意気投合して」。東映の岡田裕介社長とは十年来の友人で、「『映画は金にならないからやめろ』と言われていたが、社長になった岡田さんの脇を固めるつもりで」出資を決 めた。
    ◇  工務店が映画に出資してもうかるのだろうか。
 映画への出資金は、テレビCMに掛けていた十億円を回したのだという。「CMを十本流しても『最近よく見るね』と言われるだけ。それなら『なんで木下工務店が映画?』と思われたほうがメリットが大きい」(木下社長)と の理屈だ。
 また「若い社員が中高年の顧客と話すコミュニケーションツールとして、映画が最適」とも。営業マンが「うちはこんな映画をやっています」と「まぼろし~」のチケットを顧客に渡し、会話の糸口をつける。住宅展示場に 映画のポスターを飾ったところ、来場者が増えた-というデータも。
 「映画は誰にでも身近じゃないですか。だから木下工務店も身近な会社だって思ってもらえる」と木下社長。今後、出資のほか無名の若い監督の支援にも取り組みたいという。「もちろん本業をしっかりやった上での映画 です」と笑う。
    ◇  製作サイドの反応はどうか。遠藤茂行・東映宣伝部長は「ありがたいの一言」と話す。
 テレビ局が製作委に加わる映画は、テレビの電波を無料で使え、CMや番組内などで盛んに宣伝される。そうでない作品との差は開く一方だ。「そんなご時世、大作に限らず定期的に出資してくれるのは映画を作る側に とって非常に心強い」  過去に商社などが製作委に加わったこともあったが、時に宣伝費の赤字を埋めなくてはならない製作委のシステムが理解されず、トラブルが多かった。「投資感覚で参入して、一円でも赤字になると撤退してしまう企業 ばかり。もうかるか否か全くわからない、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界をわかってないと」と遠藤さんは苦笑する。
 木下工務店の場合は、「出資を広告戦略の一環と割り切っているのでうまくいっているのでは」と遠藤さん。「年に四社しかCMを引き受けないという吉永小百合さんに、『まぼろし~』のCMを通して木下工務店のCMに 出てもらっていることになる。作品の収支では迷惑をかけるかもしれないけれど、そういう意味で、お互いのためになっていると思います」