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ID :  8858
公開日 :  2008年 9月19日
タイトル
[それから:故・西岡常一さん生誕100年 「最後の宮大工」語り継ぐ
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/area/nara/news/20080920ddlk29040491000c.html
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元urltop:
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写真:
 
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地元・斑鳩で公演企画  「最後の宮大工」とたたえられた故・西岡常一さんが亡くなり、今年は生誕100年にあたる。地元・斑鳩町では「劇団いかるが」の団員らがその生き様を伝える公演を企画するなど、今も生き続ける哲学を語り継ごうとい う動きが盛んになっている。【泉谷由梨子】  西岡常一さんは1908年、斑鳩町に生まれた。寺院建築の技術を伝える宮大工棟梁(とうりょう)として活躍し、法隆寺の昭和の大修理や薬師寺金堂、西塔再建などを手がけた。
 西岡さんの宮大工としての考え方で特に有名なのは「木との対話」だ。西岡家代々に伝わる「伽藍(がらん)造営の用材は木を買はず山を買へ」「木は生育の方位のままに使へ」といった知恵を守り、「千年かけて育った 木は千年もつように造る」という信念を貫いた。
 「道具を大切に」と口癖のように言っていたことも伝えられている。室町以降の道具では創建当時の肌合いを出すことは不可能だと考え、絵巻物や削り跡を元に、途絶えていた飛鳥時代の大工道具「ヤリガンナ」復元に まで取り組んだ。
 著書の中では「飛鳥の匠(たくみ)は、木と少なくとも千年先を相談しながら、伽藍を建てただろう。そんな考え方は、明治以来、日本が忘れたか、振り捨ててきたものなのではないか」と語り、現代文明への疑問を投げか けている。
 劇団いかるがは99年に斑鳩町内在住・在勤者を中心に旗揚げされた町民劇団。町に伝わる民話や伝説などを題材に、年に1度公演している。今回は劇団としても10回目という節目の年にあたり、西岡さんを題材にす ることを決め、団員それぞれが自分なりの解釈で西岡さん像に迫っていた。
 物語は現代の同町の食堂が舞台。宮大工志願の少女や事故で車椅子生活を送る女性のストーリーと、西岡常一さんの一代記が重ね合わされる。練り上げるため、脚本・演出を担当する映像作家、横田丈実さん(42)= 同町=らは西岡さんの教えを受け継いだ唯一の弟子、小川三夫さんの元を訪れて話を聞いた。
 浄念寺の副住職という顔も持つ横田さんは、西岡さんが手がけた光蓮寺(大和郡山市)で100日間に及ぶ行をし、その仕事を身を持って体験したことがあるという。その時の印象を「木に包まれているような感じ。真冬 の早朝なのに、不思議と暖かくなってきた」と話す。その経験を脚本に生かした。
 西岡さんを演じる団長で高校教諭の山根勝慶さん(41)=同町=はこれまで西岡さんのことを「実はあまり知らなかった」という。しかし、脚本や著作などに触れるうち、自身の仕事である「教える」ということを、西岡さ んと重ね合わるようになったという。
 劇中、西岡さんが小川さんにカンナの使い方を教える場面で、西岡さんは細かい言葉ではなく、一度だけやって見せ「これがようできたカンナや」とカンナくずを見せるだけ。「教えられる側には成長する力があり、試 行錯誤でしか真理は見つけられない。西岡さんにそう言われている気がした」と言う。
 宮大工として成功した西岡さんだが、その哲学はすべての人の生き方に通じる。横田さんは「立派な人やなあ、というだけで終わってほしくない。見た人が悠久の時間の中で生きることの意味を考え、生き方を見つめ直 すような芝居をしたい」と話している。
 劇団いかるが第10回公演「木がおしえてくれた」は11月9日、斑鳩町興留のいかるがホール大ホールで午後1時開場。チケットは前売り1300円。問い合わせは同ホール(0745・75・7743)。同ホールで今月27日に は斑鳩町主催の「西岡棟梁生誕100年の会」が催される。午後2時開演。小川さんらが講演する。問い合わせは町企画財政課(0745・74・1001)。