ID :
10146
公開日 :
2009年 1月13日
タイトル
[住友林業 海外住宅市場を本格開拓
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新聞名
フジサンケイ
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元URL.
http://www.business-i.jp/news/special-page/jidai/200901140004o.nwc
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元urltop:
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写真:
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垂直統合型の事業強みに
2017年までの長期経営計画「プロジェクト スピード」を策定し新たな収益事業の育成に取り組む住友林業が、国内市場の縮小傾向を背景に、海外市場の開拓に挑んでいる。その際の有力な武器は、木材・建材の製
造から住宅の建築、販売に至る垂直統合型の事業体制だ。
◆豪州の戸建てで実績
住友林業は08年4月、日本の住宅メーカーとして初めてオーストラリアでの戸建て事業に進出した。現地で5位の年間完工棟数を誇る住宅会社、ヘンリー・プロパティーズ・グループと合弁会社を設立。メルボルン市近
郊で11区画の分譲住宅販売を開始した。
海外事業本部長を務める井上守専務は「1棟目が完成する前にすべて完売してしまった。すでに第2弾のプロジェクトを準備している」と確かな手応えをつかんでいる。
同社は豪州やニュージーランド、米国、インドネシアなど8カ国に拠点を持っており、07年度の海外売上高は400億円だった。ただ、現地の豊富な森林資源を活用した木材・建材の製造が75%を占め、国内での柱と
なる住宅事業は10%程度に過ぎないのが現状だ。
その背景には日本と海外の住宅文化の違いがある。同社は木造注文住宅に特化することで、国内の住宅市場で確固たる地位を築いてきた。しかし、海外では一部の富裕層を除き分譲住宅が大半を占める。加えて、気
候や生活様式が違うため、住宅部材の質や寸法も異なり技術力を生かすことは難しい。
こうしたハンディを抱えながら、02年には米国で現地企業と分譲住宅を販売。韓国でも住宅事業に参入した。しかし、事業規模は決して大きくはなかった。豪州では02年から、扉などに使用される木質ボードの生産を
始めていたが、現地メーカーなどへの販売が中心。収益基盤の大幅な拡充にはなかなか結びつかなかった。
このため長期経営計画を策定するに当たっては、重点育成分野である海外事業を大胆に見直すことに。その一環として、強みである垂直統合型の体制構築を基本方針として掲げた。
第1弾となるのが日本と同様に注文住宅の需要がある豪州での住宅事業だ。すでに開始したプロジェクトは分譲住宅だが、ヘンリーグループは年間1800棟の施工実績のうち1700棟を注文住宅で占めているという
。
これまで同社の製造した建材の使用は一部にとどまっているが、井上専務は「豪州のほか、インドネシアの工場で製造段階から注文に応じたサイズの建材を生産するようになれば、コスト低減を実現するとともに、デ
ザイン性の向上にもつながる」と垂直統合型の波及効果に期待を寄せる。ヘンリーグループとの協力については、プロジェクトごとに合弁会社をつくる方式を取り入れている。今後は住友林業の建材管理や設計システム
を生かしながら、本格的な協力関係を築く方針だ。
堅調な滑り出しをみせる住友林業の海外事業だが、海外の住宅市場にも米サブプライムローン問題に端を発した金融危機の影響が直撃。市場の不透明感は強まっている。同社の場合も米国西部で展開している分譲
住宅事業にしわ寄せがきており、在庫減らしに取り組んでいる。
◆米でM&Aも視野に
ただ、米国について井上専務は「現段階では将来の住宅市場の予測がつかない」としながら、「世界最大の住宅市場であることは間違いない」と市場性を高く評価する。米国では木材・建材の製造を手掛けていないた
め、今後は米国でM&A(企業の合併・買収)による一貫体制の確立も視野に入れているという。
将来的にはベトナムやマレーシアなどにも事業を拡大。17年度には海外売上高を、現状の5倍となる2000億円にまで引き上げる計画だ。(会田聡)
◇
≪メモ≫ 住友林業など住宅メーカーは国内市場の低迷に悩まされており、海外市場への進出が突破口となる可能性がある。このため経済産業省は昨年4月に発表した報告書で、「高い技術レベルにある日本型住宅供
給モデルを海外に提案」と明記。今後、国内メーカーの技術的強みなどについて調査に乗り出す方針だ。
しかし、米サブプライムローン問題の発生以降、世界的に住宅需要は低迷を続けており、その回復が同社の海外事業の成否を握りそうだ。