ID :
8217
公開日 :
2008年 7月 6日
タイトル
[工房木魂 細かな装飾に優雅さ
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/ehime/news/20080707-OYT8T00040.htm
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元urltop:
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写真:
写真が掲載されていました
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船の街、今治市の中心部に建つ木工作業場。長年の作業で分厚くなった手のひらから、長さ、高さとも約3メートルの堂々たる帆船の模型を生み出していく。甲板上の手すりや階段など、細部に至るまで作り
込んであり、帆船ならではの美しさと存在感を醸し出している。
来島海峡を望む大浜地区の出身。市立近見小に通っていた当時は、鋼鉄製ではなく木製の船が主流で、近所には木工造船所が何軒もあった。
切れ端をもらってきては、のこぎりなどで20~30センチの船の形に加工。ゴムを動力にしたスクリューを取り付け、海に浮かべて遊んだのが出発点。「日本有数の多くの船が行き交う海峡。船の格好良さに強くひかれ、
それを自分で再現し、走らせることは本当に楽しかった」と振り返る。
23歳になったころ、兄とオートバイや自動車の修理・販売業を始めた。エンジンの分解で手が油まみれになりながらも、年に1、2隻のペースで木工船の模型を作り続けて技を磨いた。
約20年前、「せっかく独学で高いレベルまで突き詰めてきた趣味だから、仕事にしてみよう」と転職を思い立った。
帆船へのこだわりは、「微妙なカーブが組み合わさったデザインから生み出される優雅さが何よりの魅力。近代的な船は角張っていてビルが走っているように感じてしまう。細かな装飾からも、模型化への意欲をかき立
てられますね」と説明する。
長さ、高さが数メートルの超大型の作品は、公民館や海運会社から展示用に受注することが多い。最初に、注文に応じた縮尺で、平面や側面の設計図を作成。本体より前に、わざわざ、ひな型を作って顧客の希望とすり
合わせる。
部品の木はヒノキやケヤキ、クス、サクラ、スギなど15種類。部品数は数千個に達し、大小のかんなや、のみ、やすりなどあらゆる工具を駆使して完成まで数か月から1年かける。
「見た目や香り、手触りなどで、木には人間の五感を満たす魅力があり、それを最大限に引き出したい」
組み立ては実物の船になぞらえ、底部から始めて慎重に骨組みしながら、甲板に向かって上へ進める。帆を張るためのひもを渡す大小数百個の滑車も一つひとつ木で丁寧に作る。
帆は木綿の薄い布を使用。プロペラやいかりなどは金属を加工している。塗装は、ラッカー塗料をスプレーで吹き付けていくが、木造船だけに木の色をそのまま残すケースが多い。
「好きなことを追求するのが一番。今後は、もっといろんな国の船に挑戦していきたいですね」。瞳の輝きは、少年のころと変わらない。(尾崎晃之)
買うなら
長さ数十センチで1万8000円、1・2メートルで4万8000円が目安。海運会社などに納入する超大型の作品は500万円以上もする。船の模型以外にも、魚などをデザインした壁掛けや置物、家具類、看板など幅広く
木工を手掛けている。問い合わせは「工房木魂」(0898・31・9367)。