公開日 :
タイトル
[建築技術者95%が改正建築基準法に反対した理由
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新聞名
JanJan
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元URL.
http://www.news.janjan.jp/living/0804/0804185191/1.php
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元urltop:
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写真:
イラストが説明として掲載されていました
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4月1日に東京・文京シビックホールで、シンポジウム『改正建築基準法はいらない!!』が行われ、この法改正が国民ではなく官僚の利権のためのものであることが議論で明らかになった。だが多くの建築技
術者が疑問を投げかける中、雑誌アンケートによれば、一般の人の半数以上が建築基準法改正が良かったと回答している。専門家と一般の認識にこれほど大きな隔たりがある原因は、「報道しないマスメディア」にある
と思う。
目次
1.国民にとって不要な改悪 = 官(僚)にとって必要な改正
【都市機構の八王子マンション、46棟中20棟を建替え!その原因は】
【違法建築の蔓延】
【改ざん可能な「構造計算プログラム」を大臣認定】
2.誰のために法改正が行われたのか
【表向きの理由】
【裏の理由】
3.政治には介入できないのか? 政省令
【官僚達の出番】
4月1日に東京・文京シビックホール小ホールで催された、
シンポジウム『改正建築基準法はいらない!!』。
「タブーなき建築批評誌」を標榜する建築ジャーナル社が主催した。
以下はの冒頭のシーンだ。
司会者が、あらかじめ配布されていたA3サイズの紙(1面には黒地に黄色のマル、もう1面には黄色地に黒いバツが書かれている)を持ったほぼ満員350名の参加者に呼びかけた。
「改正建築基準法を支持する人はマル、しない人はバツをあげてください。あげなくても結構です。」
その結果、あがったのは全てがバツだった。少なくともマルは皆無。どちらもあげなかった人はチラホラ。
基調講演(神田順東京大学大学院教授・建築構造/建築基本法制定準備会代表)と現場報告2件(古川保/建築家、佐藤淳/構造家)に引き続き、
第2部の「徹底討論!建築基準法はこう変える」が行われた。
しかし、1時間という限られた時間内では言い尽くせなかったことが多い。
参加者は、9割が建築関係者と推定されたから、予備知識を持っている人が多かったと思う。だからいきなりの問いかけでもバツをあげることができたのだろう。
この記事では、建築分野に関係のない一般の方々が感じるであろう疑問に対し、当事者の一人として説明を加えたい。
パネリストは、前出の神田順、古川保、佐藤淳の各氏に衆議院議員馬淵澄夫氏(民主党)が加わった4名。司会は筆者。
・建築家らがシンポで改正建築基準法に「NO!」(動画)黒井孝明記者
下記はYouTubeの動画。手持ちカメラで直接録音しているからか、笑い声やザワメキなど会場の雰囲気がわかる。但し揺れる。ソフトな雰囲気で行われたことがおわかりいただけると思う。
95%の建築技術者が改正建築基準法にNO!(日経アーキテクチュアの記事をもとに筆者が描きおこした)
このグラフは昨年11月日経BP社がウェブ上で行った建築技術者へのアンケートの結果だ。
しかし、この4ヶ月後(08年3月)に同社が一般の人に尋ねたアンケートでは、「07年6月の建築基準法改正を知っている」人がたったの34%。その人達に聞いた「改正して良かったと思いますか」には、55%が「はい」
と答えている。
4ヶ月のあいだを置いても、建築技術者と一般の認識にこれほど大きな隔たりがある原因は、報道しないマスメディアにあるだろう。
「改定建築基準法の本質(裏)」(筆者作成)
1.国民に取って不要な改悪 = 官(僚)にとって必要な改正
法改定せずとも防げた問題を放置してきた行政の不作為の結果
図の右下部分、「建築行政・不作為の結果」の説明だ。
【都市機構の八王子マンション、46棟中20棟を建替え!その原因は】
この事件は、国交省のお膝元(独)都市再生機構(旧日本住宅公団)における不祥事だが、「耐震偽装事件」発覚より10年以上も前の話しだ。
都市再生機構が89年から93年にかけて八王子で分譲したマンション。10年後の大規模修繕の調査で欠陥が判明、なんと46棟中の20棟が建替えすることになったという大事件だ。
設計、施工、工事監理の問題が指摘されている。設計事務所、工事監理事務所や施工者には公団の天下りが入っているところもあるという。かなり密接なところもあるようだ。
・都市機構マンション強度不足 「数値、ねつ造した」/読売
・都市機構、構造計算の誤り隠ぺい…理事長ら10人処分/読売
・八王子・都市機構マンション 欠陥10棟改修手付かず/読売
・八王子欠陥マンション、やはり旧公団と工事監理業者の癒着が根本原因か?/ストレイ・ドッグ
・八王子の公団欠陥マンション、ついに工事監理業者が判明/ストレイ・ドッグ
【違法建築の蔓延】
巷の違法建築をしっかり摘発してきていたら、「東横イン」のような完成後の違法改造もおきなかったはずだ。違法建築だけでなく工事完了検査を逃れていても放置してきた。建ぺい率の1割オーバーを黙認する区(特
定行政庁)もあると聞く。行政の責任は重い。
【改ざん可能な「構造計算プログラム」を大臣認定】
地震力の数値を改ざんできるような構造計算プログラムを認定していたのは、(財)日本建築センターだが、(独)都市機構と並びたつ国土交通省の身内だ。
“姉歯的”建築士が何十人いても、プログラムの改ざんが不可能であったなら問題はおきなかったかもしれぬ。つまり、「偽装環境(土壌)」をつくったのは官そのものなのだ。
だが、神田順教授は、「構造計算プログラム」を大臣認定する(頼る)こと自体が、構造設計の創造性をおとしめていると厳しく批判する。
2. 誰のために法改正が行われたのか
【表向きの理由】
言うまでもなく、「建築の安全性を確保するため」が大義名分である。
【裏の理由】
しかし実態は、まさに国交省グループの利権創出だ。天下り先の確保だけでなく、今回は「構造計算適合性判定」という新しく、膨大な儲け口を作って外郭団体に与えた。日本建築センターをはじめとする財団法人や、ト
ップに天下りを受け入れる社団法人などが対象だ。
だから、国交省とはある程度の距離を保っているようにみえる社団法人でも、アメをもらっているから何も言えない。だが、ムチに苦しむのは会員たる個人だ。それら社団法人の専務理事には行政からの天下りがたい
がい座っている。
日本建築士会連合会や日本建築士事務所協会の代表が、審議会に出ても猫のように大人しく迎合しているのはそのためだ。その一方、天下りを受け入れていない日本建築家協会は建築主(建て主)・消費者に近い立場
を鮮明にしているから、うとまれているらしい。
建築士法の改正による一級建築士の講習制度などでは財団法人だけでなく、株式会社(受験産業)にも恩恵を与えた。これらは、個々の建築士に時間的経済的負担を強いるだけでなく、結局は建築コストに跳ね返るか
ら、国民の負担増になる。
一般も無関心ではいられないはずなのだが、なかなか理解してもらえない。建築費が一挙に何割も上がることにならないと気付かないのだろうか。
・建築業界の大混乱 官僚の情報は“性悪説”をもって識別せよ!
3. 政治には介入できないのか? 政令と省令
法の条文は“一応はまとも”に書かれている(ように見える)。
だからなのか、国会はのちのちの言い訳のように付帯決議をつけるだけで通してしまう。ときには全会一致だ。しかし、その後が問題だ。
【官僚達の出番】
カシコイ官僚達の出番はそれからだ。政令は内閣だけで決められるし、省令は国交大臣が決めるから、アウトラインである法律の行間に仕込んでいた金塊を掘りおこし、加工するのに邪魔は入らないというわけだ。
そのために、官は国会に議員を送り込み続けるのだろう。
このシステムを変えられなければ、政権交代が起きても何も変わらないだろう。