ID :
6897
公開日 :
2008年 3月28日
タイトル
[桜の便り 届けた12年
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/news/20080328-OYT8T00125.htm?from=navr
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元urltop:
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写真:
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千鳥ヶ淵など千代田区内の桜の名所や、桜にまつわる人間模様を紹介するタウン誌「九段界隈(かいわい) 桜みち」が、発売中の第12号を最後に終刊することになった。花見の季節に年1回発行され、桜を
テーマに区内を歩きながら、忘れられた歴史を発掘してきた。続行を望む声は強いが、桜のように鮮やかに、その幕を閉じようとしている。
創刊は1996年。九段下で広告制作会社を営む国分紘子さん(69)が、友人らと始めた。
官公庁や企業が集まる同区は、昼間の人口は多いものの住民は少なく、町への関心も薄い。「住民にもっと町の歴史に関心を持ってもらおう」。それが創刊の理由だった。休刊1回をはさみ、12年間続けてきた。
スタッフが町を歩き、桜にまつわる人たちを取材。花見マップを作り、桜並木にまつわるエピソードを紹介してきた。人気は「新堀さんと歩く」シリーズ。元区職員で千鳥ヶ淵に桜を植樹した新堀栄一さんをガイド役に、桜
の名所をめぐった。
回を重ねるごとに読者からの情報提供もあり、忘れ去られていた歴史秘話も発掘された。
英国大使館の桜を最初に植樹した英国公使アーネスト・サトウの孫に登場してもらったり、戦前の高級集合住宅「野々宮アパート」を紹介したり。大正時代に外国人向けの下宿があったことも分かった。
「桜の談話室」欄には、毎号、著名人が訪れた。区職員だった俳優の役所広司さん、区内の女学校を卒業した作家の青木玉さん……。最終号では4月生まれの女優宮沢りえさんが、桜への思いを語っている。
発行数は約3000部。愛読者は全国に広がり、花見の時期には欠かせない冊子となった。
反面、仕事のかたわら取材や編集をする国分さんたちへの負担は増加。注文販売が中心で、受け付けや発送も自らこなさなくてはならなかった。赤字続きで経済的にも苦しくなり、終刊を決めた。
「この冊子を、毎年楽しみに待っていたのに」。最終号の注文はがきには、終刊を惜しむ読者の声がいくつも寄せられたという。
「こんなに愛してくれ、本当にうれしい。まだまだ伝えきれない情報があるので、何らかの形で新しい人に引き継ぎたい」と国分さんは話す。愛読者への感謝を込めて、秋に一度だけ「紅葉みち」を出版したり、これまで
の12号の内容を本にまとめたりする企画もあり、これから検討するという。
最終号は1冊500円(税込み)。問い合わせは国分紘子生活研究室((電)03・3222・6544)。書店で注文販売も受け付ける。