ID :
709
公開日 :
2006年 4月 5日
タイトル
[住生活基本法・中
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新聞名
日本工業経済新聞
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元URL.
http://www.nikoukei.co.jp/headline/head_disp.php?no=1019
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元urltop:
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写真:
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東京・多摩ニュータウンの「南大沢」に住む、ある夫婦はともに36歳。長女は3歳になる。2年前に南大沢の高層マンションを購入し、それまでの賃貸アパートから移り住んだ。最新設備と広々とした間取りを
評価して選んだ住宅だが、最近の地震の影響で建物にヒビが入ったという。
夫婦は「もう購入してしまったから住み続けるしかない」と、あきらめ顔で話す。彼らが多額の住宅ローンと引き換えたものは「便利だが不安」の住生活である。
1月23日に行なわれた日本建築家協会(JIA)主催のシンポジウム「どう守る建築の安全・安心」。パネリストの黒川紀章氏(日本景観学会会長)は「住む人は、そこに人生をつぎ込む」と語った。「住み続けるしかない」と
いう夫婦の嘆きも、その住宅で生涯を過ごすという覚悟から生まれた言葉であろう。
このシンポジウムで、同じくパネリストとして参加した神崎哲弁護士(日本弁護士連合会消費者問題対策委員会土地住宅部会メンバー)は「欠陥住宅が無知な消費者を食い物にしてきた」と怒りを言葉にした。
この南大沢のマンションが必ずしも欠陥住宅に該当するとはいえないが、耐震偽装問題やアスベストなども含めて、住宅に対する不安・不信は国民の間に広がっている。こうした住宅に対する不安を取り除ければ、一
つの「質の向上」と言える。
今年秋に策定予定の住生活基本計画では、10年後における耐震化率・バリアフリー化率・省エネ化率・住宅性能表示実施率などを成果目標(アウトカム目標)として掲げるという。目標に対する具体的な施策はこれから
決める状況だ。
こうした耐震化やバリアフリー化などは、既存住宅をリフォームすることで良質な住宅に改善するものである。
(財)住宅リフォーム・紛争処理センターの調べによれば、平成16年の住宅リフォーム市場は約5兆円。同センターでは「防災意識向上などでニーズが高まっており、今後も着実に成長していく」と予測。法案成立・施策
実施が活況に拍車をかけることも考えられる。
法案は「住宅取引適正化、流通円滑化」を図ることも掲げている。これは住宅性能表示や設計・建設・販売・管理などの情報提供を普及促進するもの。「建設・管理・リフォーム・流通によって住宅ストック全体の充実を図
る」(国土交通省住宅局住宅政策課)との言葉どおり、今後さらに住宅関連市場全体の盛況が期待される。
一方で「大手ハウスメーカー主導による法律なので我々にはメリットがない」(新潟県内の工務店)という声もある。中小建設業への影響・効果は見えていない。
居住安定確保を図ることを目的に「住宅セーフティネット構築」も記載されている。住宅セーフティネットは、低額所得者・被災者・高齢者・子育て家庭などが、公営住宅に入居できるように図るもの。
公営住宅への入居を求めているが、満室で入居できない人がいる一方、公営住宅の収入上限を超える収入を得ていながらも出ていかない人がいる。国土交通省では家賃制度改正などの対策で、これを是正するよう
だ。
建てることに目を向けていた住宅政策が、既存住宅ストックを活用する方向へ変わる。新築件数は大幅に減少となりそうだが、リフォーム市場にとっては追い風だ。さらに耐震改修事業も大幅に増えることが予想され
る。
この新たな波に乗ることができるかどうか、建設産業界にとっては経営方針を見直すことも必要となりそうだ。