ID :
4792
公開日 :
2007年 9月24日
タイトル
[時代を経て愛される、スイス・ネフ社の玩具
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新聞名
エキサイトism
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元URL.
http://www.excite.co.jp/ism/concierge/rid_823/
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元urltop:
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写真:
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Naef(ネフ)とは、故クルト・ネフ氏が創業した、スイスの玩具メーカー。そのデザイン性の高さと、精巧なモノづくりへの姿勢は高く評価され、ヨーロッパをはじめ、世界中で愛されている。
「おもちゃはファンタジーを生み出すものであったり、発達を促すものでなくてはなりません。何通りもの形で遊ぶことができ、美しくなければいけません。なぜなら、子どもたちはおもちゃを通して、様々な世界を知ってい
くからです。」(NAEF社カタログより)という、ネフ社の哲学は創業当時から変わらない。材質、デザイン、遊び方、色、造形、すべてに妥協せず、数々の名作玩具を生み出し続けている。
この度、現代玩具博物館にて行われた「Naef展~ネフの積み木であそぼう」に出席するため、若手で今後有望視されているデザイナーのハイコ・ヒリック氏が来日。早速、会いに伺った。
ハイコ・ヒリック氏は、1971年におもちゃ作りで有名なドイツはエルツ地方のマリエンベルクに生まれた。エルツ地方は旧東ドイツ。彼が18歳の時に東西ドイツは統一した。
「小さな頃は本当にモノがなく、それが当たり前の生活。しかし、僕が生まれたエルツ地方には玩具作りの工房がたくさんあり、木製玩具という仕事は身近に存在した。僕の生まれた家には、あまりおもちゃがなかったので、
小さな頃は絵を描いたり、木でおもちゃを作ったりして遊ぶのが日常だった」
という。その後、1990年にドイツで遊具デザインを専攻できる唯一の大学、ハレ・ブルク
ギービッヘンシュタイン芸術デザイン大学で、玩具と教材のデザインを専攻。卒業後にネフの玩具デザインに携わるようになる。現在は、ネフ社のあるスイスに在住し、ネフの玩具デザインの他、食器や家具などのプ
ロダクトデザインやパブリックアート(彫刻作品)などを手がけている。今後の活躍が期待されているアーティストの一人だ。
彼の代表作は、ポートレートにもある「アークレインボウ」。虹色に彩られた薄い板状の木が、美しい円形のカーブを描く。9枚の板と1本の棒で構成された積み木だ。
【アークレインボウ(Rainbow)¥25,200】
▲板のカーブを利用して、想像力豊かな造形が何パターンも楽しめる。また、バチで叩いたり、カーブの上にビー玉を転がしたりすることで、カランカランと良質な木独特の美しい音を奏でる。もちろん、積み木に失敗
して、パーツが崩れてしまうときも同様。自然な素材から発せられる音は耳に心地よく、失敗してもなんだか気分がいい。
この作品は、ヒリック氏が学生時代(94年)にデザインをしたものだそう。1996年には、ドイツのデザイン賞Form1996賞を受賞。その後、1998年にはドイツ連邦プロダクトデザイン賞を受賞。この賞では、プロダクトデ
ザインのフィールドで初めて玩具が受賞した。それは、玩具としての美しさはもちろんのこと、工業製品としての完成度の高さがドイツ国内でも認められたという証だ。
こんな多彩な遊び方がどうやって生まれるのか? と尋ねると、
「デザインをするときには、まず造形の美しさ、色彩の美しさを第一に考える。遊び方のバリエーションは、実際に作り上がってから、触っていくうちにどんどんと増えていく」のだと言う。また、それには「親子で一緒に遊
ぶことが大切」と加えた。子どもにただおもちゃを与え放っておくよりも、親子一緒になって楽しむ。互いにコミュニケーションをしながら造形を作り上げていくことで、刺激しあい新たな発想を育んでいくのだ。
【イマーゴ(Imago)¥25,200】
▲こちらはイマーゴという木製のモザイクパズルだ。モノクロームのドットが配されたパーツを組み合わせて、無限のパターンが生み出されていく。
▲こちらがイマーゴのバリエーション。同封の冊子にパターン例が示されているが、それを見ながらではなく、とにかく手を動かしてみて、気持ちのよい柄を探していくとよいだろう。偶然がかさなって、えもいわれぬパタ
ーンが生み出されるかもしれない
自分の好きなパターンが作れたら、部屋に飾っていくのも一興だ。幅広いブラックの額に収まっている姿はまるでオブジェのよう、遊ばない時は、モダンなインテリアの一部としても楽しめる。こちらの玩具も、2000年に
Form2000を受賞した。
【イマーゴ(Imago、日本限定モデル)¥27,300】
▲こちらは、日本だけで販売される限定モデル。4つの面に違うカラーを施すことで、そのカラーバリエーションも楽しめる。まさに、玩具の域を超えた逸品だ。
【キューブレックス(Cublex)¥4,410】
▲こちらは立体パズルの「キューブレックス(Cublex)」。2.5センチ角の8個の木片キューブが1本のゴムでつながっており、それぞれに刻まれた溝にゴムをうまく使って、「キューブの表面に描かれている不規則なライン
を1本につなげる」または「ラインが描かれていない無地面を表にする」の6面体を目指す。
一見ルービックキューブのようだが、そこはネフ社、ひと筋縄ではいかない。ゴムで連結されたキューブは、正6面体から、細長い四角柱になったり、階段状になったり……、単なる縦横だけではなく、変幻自在にその姿を
変えてゆく。対象年齢は3歳以上だが、大人でもついついハマってしまうパズルだ。
ヒリック氏がデザインする玩具は、もちろん子どもが遊ぶという前提で作られたものであるが、決して子どもに媚びたデザインではない。
「かわいいキャラクターは、世の中にありふれている。それを敢えて自分がやる必要はない。玩具とは、両手を使って関わりあえるということが大切。また、先ほど話したように親子で遊ぶためには、大人にとっても一緒
に遊びたくなるデザインを心がけている」
これらは、ヒリック氏がデザインした玩具のほんの一部。
ご興味を持った方は、ぜひ実物を手にとっていただきたい。写真からは伝わりづらい、美しい色、質感、そして手にした感触がお分かりいただけると思う。また、ぜひ手と頭を使って、思う存分遊んで欲しい。自ら手を加え
ることによって、さらに玩具は美しく形を変えてゆくだろう。