ID :
4582
公開日 :
2007年 8月27日
タイトル
[米7月中古住宅在庫、9.6カ月分に急増=依然、住宅回復の兆し見えず
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新聞名
Klugクルーク
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元URL.
http://www.gci-klug.jp/masutani/07/08/28/796.php
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写真:
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【2007年8月28日(火)】 - 前日、NAR(全米不動産業協会)が発表した7月の中古住宅販売件数は、前月比0.2%減の年率換算(季節調整済み)575万戸となり、市場予想のコンセンサス(570万戸)を上回っ
たものの、2002年11月の573万戸以来、約5年ぶりの低水準となった。それに加えて、売れ残り住宅の供給量を示す在庫も前月比5.1%増と急増し、7月の販売ペースで見た在庫水準は、6月の9.1カ月分相当から6年ぶり
の高水準となる9.6カ月分に高まるなど、依然、弱気基調が継続している。また、個人消費に影響を与える住宅価格の中央値も、在庫急増のため、前月比0.6%低下の22万8900ドルとなり、資産価値が低下している。これ
より先の24日に発表された7月の新築住宅販売件数は、前月比2.8%増と予想以上に堅調だったが、エコノミストは、住宅セクターは依然、低速ギアのままで、すぐに回復する兆しはないと見ている。
7月の中古住宅の販売件数は、5月と6月に契約した件数がベースになっているため、クレジットクランチ(金融システムが麻痺して極端な金融逼迫が起こること)が起きた7-
8月より前のデータになる。今後、フォークロージャー(住宅不動産の差し押さえ=競売)手続きが増加することを考えると、住宅在庫の一段の増加や住宅ローンの融資基準の厳格化による住宅購入者の減少、さらに、住
宅価格の低下が8月や9月以降の統計数値に出てくるのは必至なため、エコノミストの間では、住宅市場の回復は来年半ばまでないとの見方が大勢になっているのだ。
在庫水準については、7月は前月比5.1%増の459万戸で、適正水準より約200万戸多い超過剰在庫状態にあり、NARの主任エコノミスト、ローレンス・ヤン氏も、在庫水準は依然、高水準であり、最近、急増しているフォ
ークロージャー手続きが、7月の在庫水準を5-7%押し上げたと見ている。ちなみに、第1四半期(1-
3月)のフォークロージャーは5年ぶりの高水準に達しており、7月の米住宅着工件数は、前月比6.1%減の年率換算138万1000戸で、前月の同2.1%増の147万戸から急落し、1997年1月の135万5000戸以来、10年ぶりの低
水準となっている。
住宅ローンの融資基準の厳格化、住宅投資を一段と悪化させる=FRBのラッカー総裁
また、ヤン氏は、サブプライム住宅ローン(信用度の低い顧客への融資)市場の混乱による影響で、住宅ローン利用者のローン返済負担は今後、約300億ドル(約3兆5000億円)増加すると推定している。ただ、同氏は
、米経済の規模13兆ドル(約1500兆円)と比べれば、ごく小さく、経済全体には波及しないと楽観的だ。しかし、これまで利上げの急先鋒だったFRBのリッチモンド地区連銀のジェフリー・ラッカー総裁は、21日の講演で、「
最近の住宅市場動向に関するデータを見ると、住宅セクターの底入れに対する私の楽観的な見方は壊れた」とし、「住宅ローンの融資基準の厳格化は、住宅投資を一段と悪化させるだろう」と警告している。
FRBの大幅利下げ時期はずれ込む見通し=FFレート正常化で
市場では、7月の住宅統計だけでは、FRBが9月18日に開く次回FOMC(公開市場委員会)での金融政策に影響を与えるとは見ていない。FRBが信用収縮対策として、3週間前から実施してきた公開市場操作(オペ)を通
じた大量の資金供給や、民間金融機関に直接資金を貸し出すときに適用する金利である公定歩合の引き下げ措置で、ディスカウント・ウィンドウ(FRBが金融機関に直接資金を供給する制度)の利用が広がった結果、こ
こ数日間で、FF(フェデラル・ファンド)金利の実効レートが、8月初めから5%を割りこんでいたのが、週末24日には5.18%、さらに、週明けの27日には5.28%とFF金利の誘導目標5.25%に接近して、ほぼ通常レベルに戻
り、安定してきている。
このため、市場では、8月中か、あるいは、9月のFOMCと見られている利下げに対する思惑が緩み始めており、9月のFOMCでは、0.5%ポイントの大幅利下げはなく、0.25%ポイント引き下げて5.0%となるか、あるいは
、10月30-
31日のFOMC以降に利下げがずれ込むとの見方が急速に広がっている。ただ、信用収縮の状況が悪化するようになれば、FRBはディスカウント・ウィンドウで受け入れる担保証券の対象拡大やヘアカット(担保証券に対
する掛け目)条件を変更するなど手を尽くし、あくまでも利下げはそのあとと見る向きもある。
週明け27日のCBT(シカゴ商品取引所)で、FF(フェデラル・ファンド)金利先物の9月物は、前週末(24日)比7ベーシスポイント低下の94.985となり、インプライド金利が5.015%となった。これは、9月18日のFOMCで、
政策金利を現行の5.25%から5%に利下げすると織り込んでいるが、さらに4.75%に利下げする確率はほとんどないと見ている。
また、同日の米CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で、2007-2008年の四半期に期日が到来するユーロドル金利先物のうち、12月物は今年第4四半期(10-
12月)に政策金利を4.75%に利下げする確率を前週末の72%から96%に引き上げた。また、来年3月物も来年第1四半期(1-
3月)に4.5%に利下げする確率を前週末の64%から96%に高めている。つまり、利下げのタイミングが次第にずれ込み始めていることが分かる。
金融機関への資金供給は潤沢に=ディスカウント・ウィンドウで
最近のディスカウント・ウィンドウの利用状況は、先々週の週末17日に、公定歩合を6.25%から5.75%に引き下げて以来、また、22日にはシティグループやJPモルガンなど主力4行がそれぞれ5億ドル(約600億円)借り
入れたこともあり、金融機関のFRBからの借入額が膨らんだ。FRBによると、17-
22日の約1週間で、1日平均12億ドル(約1400億円)の借り入れがあったという。この数字は2001年以来6年ぶりの高水準で、そのおかげで、米国の金融機関は資金不足に直面する可能性がある顧客に対する融資に必要
な資金が潤沢に供給されていることを示している。
また、この12億ドルのほかに、実は、セカンダリー・クレジットとして、金融機関は1日平均8500万ドル(約100億円)を借り入れており、この資金は、かなり金融状況が深刻なノンバンクなど向けに貸し出されている。つま
り、合計の借り入れは約20億ドル(約2300億円)に達しているのだ。しかも、主力4行が借り入れした22日以降は、他の金融機関からの借り入れはないことから、すでに、5.75%の公定歩合よりも低金利の資金が確保できて
いることを示すというエコノミストもいる。
8月31日には、ベン・バーナンキ米FRB議長が、静養とシンポジウムを兼ねたFRBの会合で、8月にクレジット市場の混乱が本格化してから初めて、公の場で、講演をする。ワイオミング州のジャクソンホールで開かれる
が、会場にはFRBの各地区連銀総裁ら幹部が一堂に介する中で、同議長が最近のサブプライム不安とクレジット市場不安、そして、金融政策について、どんなコメントを残すか、市場の注目を集めている。同議長に対し
ては、サブプライム不安の経済への影響について、同議長が「抑制されている」と発言し、楽観的な見方を示していたことに対する風当たりが厳しくなっており、現在も利下げに抵抗しているだけに、市場では、1987年1
0月19日にNY証券取引所の株価暴落で始まった世界同時株安が起きたブラックマンデーのとき、当時、FRB議長に就任して3カ月だったアラン・グリーンスパン前FRB議長が取った迅速な対応と比較されるだけに、バー
ナンキ議長にとって試金石になると見られている。(