ID 1592
登録日
2006年 9月 6日
タイトル
正倉院修補室
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://osaka.yomiuri.co.jp/shitei/te60905a.htm
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元urltop:
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写真:
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奈良・東大寺の大仏殿の北。緑に囲まれて佇(たたず)む国宝・正倉院正倉の傍らに控えるように宮内庁正倉院事務所が立つ。簡素な平屋。「立入禁止」と大きく書かれた重々しい鉄扉の入り口を二つ通り抜け
、奥にある引き戸を開けると「修補室」がある。
「シルクロードの終着駅」である校倉(あぜくら)造りの宝庫で、1200年以上を過ごしてきた宝物群のうち、衣服や帳などの染織品と経巻をこの部屋で修理している。
「移動や展示に耐えられるか」。今秋の正倉院展に出品する宝物の状態を調べる福森さん、好地修補師長、長尾さん、吉松さん(左から)。自分たちの修復作業の成果が展示されるのは、大きな励みにもなるという 畳1
枚半ほどの和机の上には、今年秋の正倉院展で出陳する予定の板締め染めの胴着「夾纈羅半臂(きょうけちのらのはんぴ)」。染め模様がある肩や胸の部分には、まだ繊維らしい柔らかさがあるが、裾(すそ)や腰紐(ひも
)は、傷みが著しい。移動や展示に耐えられるのか、手を加えるべき個所はないか。白衣姿の職員4人が、目を凝らしていた。
宝物には様々な素材や織り方の布があるが、多くは長い歳月を経て、ぱりっと折れそうなほど硬くなったり、擦り切れんばかりに朽ちたりと劣化が進む。その縦糸、横糸の一本一本まで状態を見極めながら丹念に伸ばし、
綻(ほころ)びを直して、断片ごとに和紙の上に並べる。悠久の時を超えたジグソーパズル。一片の布に数か月、取り組むこともある。
そうして手塩にかけた“作品”がこの先、また何百年にもわたって、天平の輝きを伝えていく。
「自分の仕事がずっと残る。やりがいがある反面、修理の腕は後世の鑑賞に堪えられるほどだろうかと、脂汗が出る思いをすることもある」と、修補師長の好地(こうち)伸(63)は話す。
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