ID 13184
登録日 2009年 9月11日
タイトル
特集:盤樹の森 活動5年目、座談会 「緑の棋譜」未来へ
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/enta/shougi/news/20090911ddm010040167000c.html
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元urltop:
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写真:
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谷川浩司九段/瀬川晶司四段/北尾まどか女流初段
◆囲碁
◇洪マルグンセム第54期アマ本因坊/三村芳織二段
箱根町を舞台に、囲碁盤や将棋盤の最高級材とされるカヤの植樹と、囲碁・将棋の普及活動を行ってきた「盤樹の森」。5年目の今年はカヤの植樹に加え、囲碁・将棋界で活躍する5人に、植樹への思いや子どもへの囲
碁・将棋の普及について語り合ってもらった。(司会は世界アマ囲碁日本代表でもある学芸部・金沢盛栄記者、写真は長谷川直亮)
◇400年かけて盤になる--瀬川
◇碁の思い伝えるカヤ--三村
◇幼児にも「しょうぎ」を--北尾
◇ファンと交流増やそう--洪
◇勝負で「世の中」学んで--谷川
--囲碁、将棋の対局時に使われるカヤ盤。まずは、カヤの植樹に参加された瀬川さんと三村さんに感想をお願いします。
瀬川 植樹をして初めて、カヤが400年以上という長い歳月をかけて、盤になるのを知りました。緑を残すという意味でも、植樹は意義深い。
三村 400年かけて成長するカヤ。囲碁を伝える大切なものとして、次の世代に思いをつなげていきたいです。
--みなさん、それぞれの立場で活躍されていますが、普及、特に子どもたちへの普及についての考えを聞かせてください。
谷川 子どもはある程度強くなると、自主的にやるので楽ですね。やはり、初心者が一番難しい。子どもは飽きやすいので、1時間の指導でも、場面転換というか、やり方を工夫する必要があります。
三村 子どもに教える場合、私は質問形式でやります。「囲碁って知ってる?」と聞くと、知らなくても、「知ってるー」と答える。そこからルールに入っていきます。ただ、どうしても飽きることもあるので、最後に連碁(数
人が交代で打つ碁)をやります。対局している気分になるので、飽きずに最後までやってくれる。
瀬川 中級の子どもでも、時間が長くなると、途中から明らかに飽きてくる。リレー将棋をやったり、(私が)負けたりして、飽きさせないようにしています。それに、北尾さんが始めた「どうぶつしょうぎ」。将棋を覚える一
つの手段だと思います。
--北尾さん、お願いします。
北尾 「どうぶつしょうぎ」は、小さい女の子に教える時、まず漢字が読めないので、何か方法はないかしらと思ったのがきっかけです。小さく単純化して、カラフルなものが欲しかった。
「動物だったら、教えるのに分かりやすいのでは」「盤を小さくしたらいい」などと試行錯誤の末、今の形の「どうぶつしょうぎ」が生まれました。
瀬川 「どうぶつしょうぎ」には、将棋のエキスが詰まっています。手番、取ったり、取られたり、詰みなどの要素も入っており、将棋を覚えるのも早いと思います。
--洪さん、韓国の囲碁普及事情はどうですか?
洪 囲碁熱は2000年くらいから落ちていて、囲碁人口も減っています。経済状況も悪くなり、囲碁が一番先に駄目になる。韓国棋院も改革を進めていますが、なかなかうまくいっていません。
--日本の囲碁界について、どう思いますか?
洪 日本の棋士はファンとの触れ合いが少ないのではないでしょうか。大会でも、気楽に子どもと打ったり、教えたり、もっと積極的に触れ合うようにすればいいと思います。私も教室をやっているので分かりますが、10
年後に誰が囲碁のスポンサーをしてくれるか心配です。
--厳しい話が出ましたが、どうすればいいのでしょう?
洪 囲碁を普及させるにはまず、学校から始める必要があります。たとえば東京なら、各区にお願いして、囲碁部を作らないといけない。そして、半年に1回くらい学校同士、区同士などで個人、団体戦をやるべきだと
思います。
--学校教育への普及が急務ということですね。谷川先生、最後に一言お願いします。
谷川 私自身、集中力、思考力、判断力などさまざまな力を将棋を通じて身につけたと思っています。子どもたちにも、将棋や囲碁をやることによってそうした力をつけてほしい。また、将棋は、勝ち負けに責任を負わ
なければなりません。世の中には権利があれば義務があり、自由があれば責任もある。二つが対になっている。そういう世の中の決まり事も学べます。さらに、将棋、囲碁をすることによって、いろいろな感情が芽生えま
す。指すと楽しい、勝つとうれしいし、負けると悔しい。この気持ちを大切にしていく中で、自分で感じ、考えるようになり、自主性もつくと思います。
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◇箱根に21本を植樹
神奈川県箱根町畑宿の「匠の森」の一角につくられた「盤樹の森」。「盤樹の森」実行委員会は最初の年に9本、その後は3本ずつ、合計21本のカヤの苗木を植えた。カヤは地元の畑宿生産森林組合などが下草刈りなど
手入れをし、一本も枯れることなく育っている。最初の年に植えた苗木は約30センチから1・5メートル弱までになった。
イチイ科のカヤはゆっくり成長し、樹高20メートル、幹の回りは3メートル以上になる。このため、生態系を考えると密集して植えることができず、この森での植樹は今年が最後になった。
先月5日の植樹には、囲碁の梅沢由香里女流棋聖、将棋の瀬川晶司四段、山口昇士箱根町長らが参加。梅沢さんはあいさつで「夢のある事業。今後もカヤがどう成長していくか見守っていきたい」と述べた。
◇座談会詳細、30人に贈呈
座談会の詳細を収録した「盤樹の森」パンフレットを30人に差し上げます。ご希望の方は30日までに、はがきで〒100-8051(住所不要)毎日新聞社事業本部「盤樹の森」係へ。応募多数の場合は抽選。
◇学生本因坊と箱根薪能開催
今年の夏、箱根では小田急箱根レイクホテルで「毎日・佐川急便杯争奪第53回全日本学生本因坊決定戦」が、箱根神社で「箱根薪能」が開かれた。全日本学生本因坊決定戦では、花巻未生さん(専修大4年)が初優勝し
た。
◇どうぶつしょうぎ、今月に発売
盤は3×4の12マス、駒はヒヨコ、ゾウ、キリン、ライオンの計8枚という新しい将棋ゲーム。駒には動ける場所が点で表示され、ヒヨコは「成る」と「ニワトリ」になる。9月、市販化された。
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《主催》
2009年「盤樹の森」実行委員会
毎日新聞社
(財)日本棋院
(社)日本将棋連盟
(財)関西棋院
スポーツニッポン新聞社
箱根町
(財)箱根町観光協会
ザ・プリンス箱根
小田急電鉄
小田急箱根ホールディングス
(社)日本花いっぱい協会
《後援》
文部科学省
農林水産省
環境省
箱根町教育委員会
《協賛》
三菱商事
丸紅
パンダネット