ID 12929
登録日 2009年 8月17日
タイトル
<サイエンスリポート>樹木の形に学ぶ
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新聞名
中日新聞
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元URL.
http://www.chunichi.co.jp/article/technology/science/CK2009081802000128.html
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元urltop:
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写真:
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夏の日の木陰がひんやり涼しいのは、どうしてなのでしょう。「実は、木の形に熱を逃がす秘密があるのです」と言うのは、京都大学大学院人間・環境学研究科の酒井敏教授。樹木の形を見習った「フラクタル
日よけ」を開発し、水もエネルギーも使わずに都市を冷やす方法を探っています。
人工衛星で地上を観測すると、樹木が多い郊外に比べて都市は地表温度が高いことがわかります。どうしたら都市を冷やせるのか。酒井教授は、ビルや道路が大きな表面積を持っているのに対し、樹木は小さな葉が集
まっていることに着目しました。表面積が小さいものほど熱くなりにくいことも、面積の違う金属板に日光を当てる実験を行い確認できました。
しかし、小さな板でもびっしり敷き詰めれば大きな板と同じ。どう並べればより熱くなりにくいのか、酒井教授はさまざまな並べ方でその温度を比較しました。
その結果、全体を見てもその一部分を拡大しても同じ形をしている「フラクタル」という形に並べると、温度が上がりにくいことが分かりました。
フラクタルは入り組んだ海岸線や腸の内壁など、自然界によく見られる形です。「樹木の葉もフラクタルなのかも」と酒井教授は考え、樹木の葉の位置をレーザーで調べました。するとやっぱり、葉はフラクタル的に並ん
でいたのです。
樹木は大昔から、フラクタル状に枝や葉を伸ばして暑さをしのいできたのかもしれません。「水を蒸発散させる時の気化熱だけで太陽からのエネルギーを逃がそうとすると、樹木は干からびてしまう」と酒井教授。そのた
め、形の工夫が必要になったのでしょう。
この樹木の知恵を日よけに応用したのが、日本科学未来館の入り口のフラクタル日よけです。八月三十一日まで設置されています。
日よけ自体の表面温度は、晴れた日だと普通の平らな日よけより一〇~二〇度も低くなります。すき間からさす日差しは、木漏れ日のように涼しげです。夏休みで未来館を訪れる機会があれば、このフラクタルが生み出
す涼しさをぜひ感じてみてください。
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