1. HOME
  2. 木の情報発信基地Top
  3. 8.樹木
  4. 樹木・植樹・木のニュースアーカイブ TOP
ID 12808
登録日 2009年 8月 8日
タイトル
林間の冷気を造りだす(望ましい家を求めて・ 林 望
.
新聞名
東洋経済オンライン
.
元URL.
http://www.toyokeizai.net/life/column/detail/AC/d12bc1d3f3135907459d5423ab5674cd/
.
元urltop:
.
写真:
 
.
以上、書庫について論及したところは、まったくこれ、書庫という特殊の空間についてのみ考察したもので、住空間はこれとはまた全然違うコンセプトで考える必要があることは無論である。
 つまり、海辺の家の書庫は、外気を遮断して除湿することを大前提とするけれど、居住空間はその正反対で、いかにして快適な海の気を室内に導き入れて、以て自然の気持ち良さを享受するかということが前提になら なくてはならぬ。
 住宅建築は、必ずしもひとつのコンセプトで統一することはできないのである。
 さて、私は毎日夜の道を4キロほど速歩運動するのを日課としているのだが、そうやって降っても照っても歩き続けていると、ちょっとした気温の違いなどが、よく感じ分けられる。
 たとえば、こういうことがある。
 日中33度とか35度とかいうようなかんかん照りの猛暑だった日は、夜も当然に熱帯夜で、熱暑に焼かれたコンクリートやアスファルトは、おのずから蓄熱器の役割を果たし、夜になっても気温の下がるのを阻害するとい う機序がある。これが、ヒートアイランド現象のひとつの病巣である。
 ところが、ずっと歩いていくうちに、道が広々とした栗林だとか植木畑のすぐ脇を通るというようなところがあると、そこだけは、まったく魔法のようにヒヤリとした夜気が感じられるのである。
 これは申すまでもなく、いっぱいに枝を茂らせた木々が、その葉に陽光を受けて光合成をするために、日光は地上まで届かない。そしてまた、同時に根からは膨大な量の水が吸い上げられて、葉の炎熱を和らげるとい う働きがある。この2つのシステムによって、木々の茂るところでは地面が温まらないのである。
 また、こういう経験もある。
 私は、東京の自宅の他に、山梨県北杜市の南アルプス山麓に山荘をもっているのであるが、この山荘は標高でいうとたかだか600メートル程度の低山帯にある。
 気温は標高100メートルにつき0.6度ほど低下するというのが目安だが、このあたりは甲府盆地の西に隣接している関係でそもそもが涼しい場所ではない。甲府から韮崎あたりは、炎熱の頃には36度とか37度というよう な高温になることが珍しくないのだ。とすると、そういう日には、標高600メートル程度では、気温が30度を超えることが避けられない……はずであるが、実際にはそんな高温にはならない。
白州の山荘のバルコニー。このようにわが白州の家のバルコニーには、深い軒が設けてあって、直射日光は射し入らないようになっている。そうして周囲は自然の雑木林なので、ここは夏なお涼しい別天地である。私の もっとも好きな場所のひとつ。
 それはなぜかというと、この山荘は、まったく自然のままの雑木林(落葉広葉樹林)のなかにあって、真夏の陽光といえども、重なり合う枝葉に遮られて地上までほとんど届かないからである。したがって、林間の土壌は 常に冷たく、そこを通過してくる風は冷涼で一日中温まらない。これがために、下から林道を上ってくると、雑木林に入ったとたんに、すーっと空気が冷たくなるのがわかる。
 いまでは家のすぐ横にある朴(ほお)や山栗、桜、クヌギなどの木々がすっかり大木になって屋根の上まで枝を延ばしている関係で、屋根も焼けないから、室内(ログハウスなのでもともと壁面の断熱性は抜群である) の気温も決して暑くなることがない。
 こういう経験は、私に、快適なる家とは何かということを教えてくれる。
 すなわち、わが理想の海辺ハウスは、もともと高原の家のようには涼しくないけれど、ただし、海から吹いてくる風は海水で冷やされて必ず涼しいはずである。それが地上の焼けた土によって熱せられる結果、家が猛暑 に曝されるのだから、それならば、家のまわりじゅうに雑木林を造成して、要するに夏の間は周囲の地面に日が射さないようにしてしまえばいいのである(冬は葉が落ちるので十分に日差しが暖かい)。
 たとえば、広々とした芝生の庭にイングリッシュガーデンなんてのは「少女趣味」としてはよろしいけれど、亜熱帯のわが日本の酷熱の夏にはまったく似合わない。芝生では炎熱を防ぐことはほとんどできず、花檀など は咲かせるだけ手間がかかって、住まいを快適にする機能はまったく期待できないからである。夏の間、蜂や虻や蚊と闘いながら炎天下に雑草とりをするなんてことは、まっぴら御免を被りたいと、私は思う。
 したがって、わが理想の家には、芝生の庭などは造成せず、ひたすら、栗、銀杏、欅、クヌギ、楓(かえで)、白樺、というような落葉広葉樹林を造る。そして以て、その自然の木々の力で無料の冷房、ゼロカーボンの冷 房を目指したいと思うのである(じつは私の究極の夢は、八戸の丘の上に家を造って、1,000坪ほどの敷地にはブナの木をたくさん植えて、その屋敷をBeechcroftと名づけることなのであったが……)。
..

このページの公開日は1999年11月12日。最新更新日はです。

中川木材産業のビジネスPRその19   「diyで作るキットデッキ コンセの実例」商品ページはコチラです。 画像クリックでそれぞれ体験談に。(公開2018.8.1 更新2019年11月12日 )
kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce kitDeck-conce