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ID 12329
登録日 2009年 6月29日
タイトル
CSR 森林とかかわる企業の取り組み
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新聞名
ダイアモンド・オンライン
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元URL.
http://diamond.jp/go/pb/tieup_090629forest/index.html
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元urltop:
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写真:
 
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森林の減少は生物多様性の消失だけでなく、地球温暖化をも促進する。森林が開発されることで樹木や土壌にストックされていたCO2が短期間に大気中に放出されるからだ。途上国の森林減少をどう食い止めるかが、 ポスト京都の枠組みのなかで注目されている。今年12月にデンマーク・コペンハーゲンで開催される気候変動枠組条約締約国会議COP15でも重要なテーマの1つとなるだろう。さらに来たる2010年は、国連が定める「 国際生物多様性年」。名古屋で生物多様性条約締約国会議COP10が開催される。森林や生物多様性保全に果たすビジネスの役割にも注目が集まる。
イラスト/藤原義夫 森林はわれわれにさまざまな恵み=生物資源や生態系サービスをもたらしてくれる。森林を失えば、その恵みも同時に失ってしまうことになる。途上国の森林の減少は、グローバル経済に組み込まれるなかで進行してい る。食い止めるにはどうしたらいいか。取り組みはようやく始まったばかりだ。
環境ジャーナリスト/環境教育コーディネーター 小澤祥司  オランウータンはマレー/インドネシア語で「森の人」という意味だが、この言葉は示唆に富んでいる。オランウータンに限らず、類人猿は基本的に森で暮らす。人間の祖先はその森を出て「草原のサル」になった。正 確に言えば、乾燥化が進み、森が縮小して出ざるをえなくなったようである。草原には恐ろしい肉食獣が跋扈していた。猛獣から逃れるために人間の知恵や社会性やコミュニケーション能力が進化したのではないかと 考える学者もいる。それに比べて母なる森は恵み深く、穏やかだった。
 その「失楽園」の遠い記憶がなせる技なのか、人間は、恵み豊かな森を切り開き、利用してきた。  以前オーストラリアのタスマニア島を訪れたとき、島を覆う原始のままのように見えた森林のほとんどが「二次林」であると知って驚いた。タスマニア島の先住民は、森に火を放ち、草原を維持してそこにやって来るカ ンガルーなどの獲物を狙っていたのだという。ヨーロッパ人が来島後、タスマニア島人は滅ぼされてしまった。その後回復したのが、現在の森林であるという。オーストラリア大陸でも同じような一種の森林管理が行なわ れていたようだ。自然との共生をしていたと思われるオーストラリア先住民だが、事実はそう単純ではなかったのかもしれない。それでも狩猟採集生活であれば、人口もさほど増えないし、森林を破壊し尽くすことはなか ったのだろう。
 しかし、農業が始まり文明が起こると森林の大規模な破壊が進むようになる。そして、森の喪失とともに、その恵みを失って滅んでしまった文明が幾多もある。
 森林の減少は今も、それも猛スピードで進んでいる。
 国連食糧農業機関(FAO)が2年に一度発表している「世界森林白書(State of the World’s Forests)」の2007年版によれば、世界全体では毎年0.2%ほどの割合で森林が消失している。年間の森林消失面積は730万ヘクタール。約3秒ごとにサッカー場1つ分の森が消えていることになる。地域別に見ると減少 の度合いが激しいのは、東南アジア、アフリカ、そしてラテンアメリカだ(図表参照)。これらの地域には熱帯雨林が広がる。世界のほかのどこよりも数多くの動植物が暮らし、生物多様性のホットスポットともいわれる。人類 にとっても多くの陸上生物にとっても「故郷の森」といっていい。  熱帯雨林減少の主原因は、言うまでもなく人間による開発である。切り払われ、焼き払われたあとは、単一の作物を栽培する広大な農場や牧場に変わる 。失われた生態系は、元には戻らない。
 熱帯雨林は巨大な炭素のストックでもある。樹木の地上部と根に加え、土壌に堆積したリター(落葉落枝)などの有機物に固定されている炭素がほぼ同じくらいあるといわれている。森林が切り払われ焼かれると、樹木 からCO2が放出されるとともに、土壌中の有機物の分解が進み、CO2やメタンのかたちで大気中に出ていく。低湿地にある東南アジアの熱帯雨林の下には厚い泥炭層が広がっており、火がついた泥炭からの煙が周辺国 にまで広がって問題になっている。火がつかなくとも、排水路を切り開いて土地が乾燥化すれば、泥炭はやはり分解を始める。焼き払われた樹木や泥炭からのCO2排出を含めると、インドネシアは世界第3位の温室効果 ガス排出国になるという報告もある。森林破壊によるCO2排出は、世界の温室効果ガス放出の5分の1ほどを占めるともいう。
 1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された「環境と開発に関する国連会議」(UNCED、地球サミットとも呼ばれる)は、その後の地球規模での環境問題に関する各国の取り組みを方向づけた会議だった。UNC EDで「気候変動枠組条約」とともに署名されたのが「生物多様性条約」である。UNCEDでは、同時に「森林に関する原則」も採択された。これは国家に森林を利用する主権を認めつつ、その多様な機能の維持や持続可 能な経営などを求めたものである。  日本の森林はほとんどが人の手の入った二次林である。しかし、広葉樹を中心にした木々を燃料(薪・炭)や資材として繰り返し利用しながら、そこでは多様な動植物が維持されてきた。そのような森林を雑木林と呼び 、雑木林を含む人がかかわった環境を里山と呼んでいる。持続可能な森林経営のモデルといえる。  たとえば、武蔵野(東京都)の雑木林は、江戸時代になって新田開発のために造られた人工的な森林だ。雑木林は農家に燃料や肥料、資材を提供し、持続的な生産を可能にした。同時にそこには四季折々の花が咲き、 野鳥や昆虫など多様な動物が暮らすことができた。  安倍内閣は21世紀環境立国戦略(2007年)のなかに、こうしたわが国の自然共生の知恵と伝統を現代に生かすとともにそのコンセプトを世界に発信するとして「SATOYAMAイニシアティブ」を掲げた。  ただし、残念ながら肝心の日本の里山は、今風前の灯火である。宅地やゴルフ場などの開発、スギやヒノキの植林、さらに石油やガスを使うようになり、里山を利用しなくなったことが原因だ。こうした里山の管理放棄は 、シカやサル、クマなどの野生動物の行動にも影響を与えている。人が手入れをしない森は笹や灌木が生い茂って見通しが悪くなる。動物が移動しやすくなったことも、畑や人家近くに出没するようになった理由の1つだ と考えられている。スギやヒノキの花粉症も結局は単一の樹種ばかりを植えたことによる自然のしっぺ返しといえるのかもしれない。
 多くの樹種によって構成される多様性に溢れた森は、衣食住や薬品などの生物資源、気候の緩和、水質の浄化、洪水の調節や水資源の涵養、土壌の形成など、さまざまな生態系サービスを私たちにもたらしてくれる。
単純な植林地よりも、多様性の高い森のほうが、CO2吸収固定能力が高いという研究もある。
 最近発表された国連環境計画のレポート「The Natural Fix?」は、森林など生態系によるCO2の吸収固定の機能を評価すべきだとし、生態系炭素管理(Ecosystem Carbon Management)の必要性を強調している。
 途上国が行なう森林の保全への取り組みを先進国が支援する枠組みである「開発途上国における森林減少や劣化による排出の削減(REDD)」は、ポスト京都議定書における手法(メカニズム)の1つとして、今年12月 のCOP15コペンハーゲン会議でも議論になるはずだ。
 しかし、ただ資金を援助すればいいのか。インドネシアやマレーシアの熱帯林が減少している主因は、オイルパームのプランテーションだ。パーム油は食品や洗剤など、さまざまな用途に使われ、最近は軽油代替燃料 であるバイオディーゼルの原料としても期待されている。途上国の森林減少はグローバル経済と結び付いている。わが生活とわが足元にある森林の現状を見直すことも求められよう。
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このページの公開日は1999年11月12日。最新更新日はです。

中川木材産業のビジネスPR その18 (公開2018.8.1 更新2019年11月11日 )