ID 779
登録日 2006年 4月13日
タイトル
御衣黄(ぎょいこう)桜は京そだち
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新聞名
JanJan
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元URL.
http://www.janjan.jp/column/0604/0604122275/1.php
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元urltop:
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写真:
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漱石は罪作りなことを書いたものである。小説『虞美人草』に或るさくらの種類を名文調で綴っているが、後々までその判別が尾を引いているのだ。
『虞美人草』九 より引用(参考:青空文庫)
「どうです御宅の桜は。今頃はちょうど盛(さかり)でしょう」で結んでしまった。
「本年は陽気のせいか、例年より少し早目で、四五日前がちょうど観頃(みごろ)でございましたが、一昨日の風で、だいぶ傷(いた)められまして、もう……」
「駄目ですか。あの桜は珍らしい。何とか云いましたね。え? 浅葱桜(あさぎざくら)。そうそう。あの色が珍らしい」
「少し青味を帯びて、何だか、こう、夕方などは凄(すご)いような心持が致します」
「そうですか、アハハハハ。荒川(あらかわ)には緋桜(ひざくら)と云うのがあるが、浅葱桜(あさぎざくら)は珍らしい」
「みなさんがそうおっしゃいます。八重はたくさんあるが青いのは滅多にあるまいってね……」
「ないですよ。もっとも桜も好事家(こうずか)に云わせると百幾種とかあるそうだから……」
「へええ、まあ」と女はさも驚ろいたように云う。
「アハハハ桜でも馬鹿には出来ない。この間も一(はじめ)が京都から帰って来て嵐山へ行ったと云うから、どんな花だと聞いて見たら、ただ一重だと云うだけでね、何にも知らない。今時のものは呑気(のんき)なものでア
ハハハハ。――」
昨年だったか。拙サイトのPhotoBBSへ常連のartisanさん(「必撮!勤め人
artisan.exblog.jp」)からギョイコウ(御衣)の写真2枚の投稿があった。すぐさま漱石ファンのMさんからは次のような書き込みがあったのを思い出した。漱石の『虞美人草』に関連しての疑問のようだ。
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