ID 8284
登録日 2008年 6月15日
タイトル
木材の街 桜井かいわい
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000130806160001
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元urltop:
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写真:
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幹は環境 次代に芽
ちょっと歩けばそこここに製材業者の看板が目に入り、スギやヒノキの清らかな香りが漂う。木材の街として知られる桜井市は、吉野や宇陀などの山林資源の木材集散地として発展してきた。需要低迷など逆風が続く一
方、環境に優しい木の長所に注目し、啓発活動を地道に続ける若手グループなど、新たな機運も育ちつつある。
(大久保直樹)
桜井市は明治・大正期から、鉄道網の発達とともに木材集散地として栄えてきた。70年ごろは、桜井木材協同組合に加盟する業者だけで約260社にのぼった。だが、木材需要の低迷や安い外材の輸入などに押され、
今では80社ほどに減ったという。
「作れば売れる時代だった。55年には国鉄(現JR)桜井駅の南部一帯を焼いた大火があったが、あっという間に復興するぐらい需要が旺盛だった。売れない時代が来るなんて当時は想像もできなかった」。製材業者十
数社が集まる安倍木材団地で「重坂商店」を営む重坂眞一さん(83)は振り返る。
それでも市南部の県銘木協同組合を訪れると、山林業者と製材業者の間を取り持つ原木市の活気が感じられた。約1万坪の広大な敷地に、スギやヒノキなど県産中心の原木約1600本が並ぶ。全国から集まった数十人
の業者が真剣な表情で品定めしていた。
「年輪の密度や色で質が分かるんです。秋には5千本ほど並びます」。同組合の井上隆夫さん(51)が教えてくれた。
一方、環境や健康への負荷が少ない木材の良さを見直す機運が高まりつつある。
「ビルでも一部にフローリングを採り入れるなど、新たな需要が広がろうとしています」と丸清木材の中尾義勝専務(35)。2年前から、地元の小学校などで木材の良さを学ぶ教室を若手の仲間らと始めた。クイズを交
えた独自のプログラムは毎回、大きな笑いを誘うという。
「次の世代のためにやれることはまだたくさんあります」。木材の街にしっかりと若木が根付きつつあるようだ。
☆★☆よりみち☆★☆わきみち☆★☆まわりみち☆★☆
◎“亀かめば”健康一役
日本三文殊のひとつとして知られる桜井市阿部の安倍文殊院で、亀の形をした「亀パン」(噛(か)めパン)が人気だ。パン生地と中のあんに健康に良いとされるカボチャを使い、さらにかむことで頭の活性化をねらう。
十数年前に販売を始めた。愛敬たっぷりの表情も支持を集め、今では参拝客らのお土産の定番のひとつという。1個200円。
◎手塩の和菓子じわり
手作りにこだわった和菓子店「げん」(0744・46・0818)では、県産のクズを使った「くず桜」や黒糖を使った「わらびもち」などが評判を呼んでいる。京都の老舗(しにせ)などで修業した後、水谷高志さん(42)が8年 前に開き、今は妻の由美子さん(43)と営む。秋にはクリを使った大福も登場。口コミで評判が広がってきたが、高志さんは「まだまだ修業中です」と謙虚だ。
☆★☆笑顔に こんにちは☆★☆
◎木の良さ見直して
木材協同組合などが出資する「あるぼーる」(0744・45・3955)は、木造住宅の建築などを手がけている。年々洋風化が進んでいるというが、前川和彦取締役(45)は「洋風でも天井裏が見える造りを望む人が増え
るなど、木の良さが見直されつつあるようです」と話す。「予算と折り合いをつけながら、お客さんの夢を実現したい」
◎家業・趣味 節目なし
「県産木材は芯が腐りにくく、枝があった跡に残る『節』の少ない良質な木材が多いんです」。22歳のころから家業を手伝う中尾義勝さんが解説してくれた。木に慣れ親しんで育ち、天神社のケヤキなど市内外の巨木を
眺めるのが趣味だ。「木は人の手で増やすことができるし、温度変化が少ないから温かみもあるんです。木ってほんまにえ~でしょ?」
◎洋の甘みに温かみ
ログハウスが目を引く洋菓子店「木風(こ・ふう)」(0744・43・5254)。店内に木のベンチが並び、「温かみを感じる」と好評だ。地元出身の店主菊岡広行さん(35)は「木に親しんで育ったから、やっぱり木造がいい」。
クリの甘みが上品に広がるモンブランや、ほどよくしっかりした食感の「木風ショート」が人気。「気軽に来て安らげる場にしたい」
◎母の教え 韓流の味
韓式食堂「みりゃん」(0744・45・5567)は、石焼きカルビビビンバ定食や山形牛などを使った「みりゃん鍋」が売れ筋だ。オーナーの崔本敏彦さん(49)は「母から教わった味付けがベースです」と明かす。キムチや
ナムルなどは妻のとも子さん(45)の手作りで「ビビンバの味はナムル次第。一度味わってみて」と笑顔で語る。
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