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ID 7521
登録日 2008年 5月 8日
タイトル
記者の目:京都議定書・約束期間 日本突入=田中泰義
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20080508k0000m070142000c.html
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元urltop:
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写真:
 
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山に入ると幻滅することが多い。間伐が不十分で、ひょろひょろとした木が密集し、昼も暗く不気味だからだ。生き物も少ない。こうした森は「緑の砂漠」と呼ばれる。京都議定書に基づき、日本は4月から、温室 効果ガスの排出削減義務期間(約束期間)に入った。議定書は森林による二酸化炭素(CO2)吸収を削減分とすることを認めているが、そのためには、間伐や下刈りによる植林地の手入れが欠かせない。約束期間入り を、日本の林業を再生し、緑の砂漠を解消するきっかけとすべきだ。
 大学時代、オリエンテーリング部に所属していた。全国の山を会場にした競技会によく参加したが、薄暗い未整備な森で自分の位置を見失い、言いようのない不安に襲われたことが何度かあった。以来、荒れた森が嫌 いになった。温暖化問題取材班の一員として年初から各地の森を訪ねたが、改めて森の手入れは重要だと痛感させられている。
 高知県(大豊おおとよ)町は四国山地の中央にある。山主から間伐を請け負う第三セクター「とされいほく」の半田(州甫くにお)副社長(65)の案内でスギの植林地に入った。ひざ下まで雪があったが、間伐された森のス ギは幹が30センチ以上あり、堂々と天を指していた。一方、間伐不足の森はスギの直径も間伐された森の7割ほどで、雪の重みで大量に折れていた。これでは、水源を養い、さまざまな生き物のすみかとなることも難し い。
 高知だけではない。林野庁によると、日本の森林約2500万ヘクタールのうち530万ヘクタールで間伐が必要という。
 議定書は、温室効果ガスを90年比で6%削減する義務を日本に課したが、政府はこのうち3.8%分を森林吸収で賄う計画だ。吸収量に算定できるのは、新たな植林地や、間伐・下刈りをして健全に育成した森林に限 られる。日本では新たな植林地の確保は難しく、間伐の促進が重要になる。現在の間伐量は年間約35万ヘクタールだが、目標達成には、毎年あと約20万ヘクタール必要だ。
 政府は民有林の間伐費の5割を補助するなど間伐事業に毎年数百億円の予算を計上しているが、林業従事者は不足している。補助金をもらっても、間伐が山主の負担になることに変わりはない。資金投入だけでは目 標達成は難しいと思う。
 群馬県(下仁田しもにた)町では、地元の森林組合が複数の所有者の森林をまとめて間伐している。機材搬送などに使う作業道も230キロ整備した。低コスト化が可能で、下仁田方式と呼ばれる。だが、(神戸金貴かん べかねたか)組合長(68)は「高齢化した山主は、山に入るのが難しい。都会に暮らす人も増えた。間伐前に必要な所有地の境界確認に2年はかかる」と言う。私が会った山主の多くが「損をしないためには何もしないに 限る」とこぼしていた。
 日本の林業が価格の安い輸入材との競争に敗れ、衰退したことが背景にある。
 森林は、木材を生産し、収益の一部が間伐や保全に回されてこそ、持続可能な利用ができる。木材が活用されないと、森は荒れ、成長は滞る。60年代には、スギの立木1立方メートル分で10人以上の作業員を雇えた が、今は1人も雇えない。
 だが、取材では林業の未来の可能性も見えた。
 半田さんは01年の副社長就任時に3300万円あった累積赤字を3年で解消した。社員教育の徹底などで仕事の効率化に成功した。現場社員17人の平均年齢は約32歳と若い。
 中国の急激な経済成長で輸入材確保が難しくなり、製材会社や住宅メーカーは国産材に目を向け始めた。
 議定書採択の地・京都では06年、行政と企業や大学が連携し「京都モデルフォレスト協会」が発足。植林や間伐、ボランティア活動のリーダー育成などに取り組んでいる。理事長の(柏原かしはら)康夫・京都銀行頭取は 「林業を中心とした産業を定着させ、山村に若者を呼び戻したい」と語る。
 実は政府の間伐関連予算の約2割は使い切られず、翌年度に繰り越されている。林業関係者は「林野行政担当者は、間伐にさまざまな困難が伴うことを理解していない」と指摘する。
 間伐のための一過性の資金投下で林業が再生するだろうか。大切なのは、山主や間伐事業者にやる気を持ってもらうことだ。生産性の高い事業者を税制で優遇するなど、間伐や国産材の利用を促進する長期的な施策 こそが求められている。
 森が大切なのは、議定書のためだけではない。森を育てることで多様な生物のすみかとなり、人々の憩いの場となり、資源となる。樹木は数十年以上かけて成長する。いま対応を誤ると、次世代にそのつけを回すこと になる。(
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このページの公開日は1999年11月12日。最新更新日はです。

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