ID 6576
登録日 2008年 3月 4日
タイトル
巨木は歴史の生き証人、湖北地域では信仰の対象
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新聞名
毎日jp
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元URL.
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20080219ddlk25070207000c.html
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元urltop:
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写真:
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神社や寺の境内などで何気なく見かけるケヤキやイチョウなどの樹木。樹齢100年を超える巨木も少なくなく、そうした巨木や名木に対する関心も高まっているという。県内の巨木や名木を訪ね歩く「滋賀
の名木を訪ねる会」の辻宏朗会長(67)に、巨木の魅力や楽しみ方について聞いた。【阿部雄介】
--きっかけは?
00年に60歳で会社を定年退職して、すぐ高齢者の生涯学習拠点の県レイカディア大学(草津市)に入りました。園芸学科を選択し、講義で樹齢50年の杉1本が6人分の人間に必要な酸素を出すことなどを学び、樹木
にとても関心を持ちました。その時、自宅の近所の五百井(いおのい)神社に、樹齢2000年ともいわれる杉があるのを見つけ、身近な場所にも巨木があると分かりました。
--それで各地の巨木を訪ねるように?
1人ではなく、みんなで見に行こうと思い、当時、約30人いた園芸学科の仲間に声をかけました。それが「訪ねる会」発足のきっかけです。
--どんな活動を?
みんなで各地の巨木を見に行き、写真を撮っていると、活動を知った県から「巨木の場所の情報を提供するから、展示会を開かないか」と提案があり、03年に琵琶湖博物館で展示会を開催しました。すると、大きな反
響があり、その後も公民館や図書館などで現在まで約20カ所で写真展を開いています。
--巨木を探すのは大変では?
山奥にも、まだ見つかっていない巨木はあるでしょうが、実際はそうでもありません。巨木の定義は、おおむね幹回りが3メートル以上ですが、県が調査した巨木の約6割は神社や寺の境内にあります。そういう場所の木
は手入れが行き届いているお陰で長生きするのでしょう。
--境内の木は神様同様に大切にされる?
そうかもしれませんね。さらに、これは湖北地域だけに見られる特徴ですが、巨木そのものが信仰の対象となっている「野神さん」と呼ばれる木がいくつかあります。面白いのは農作業をする春から秋にかけてだけ、神
様が降りて来るという考えで、4月と8月に祭りをします。私の知る範囲では全国でもこの地域にしかない風習で、とても興味深く思っています。
--巨木の魅力は?
巨木を見るだけで、さまざまなロマンがわくところでしょうか。まず樹齢の推定でも見方は人それぞれ。巨木によっては「伝承樹齢」といい、数千年といわれるものもありますが、実際は数百年であることも少なくありませ
ん。もう一つは、そうした伝承や歴史を調べることで、巨木が当時の歴史の生き証人になっており、胸が躍ります。例えば、大津市にある木下神社には、樹齢600年とも言われるイチョウがあるのですが、関ケ原の戦い
に敗れた石田三成がこの木につながれたという言い伝えがあります。真偽のほどは分かりませんが、もし本当だったらとか、違っていたとしても、この木は間違いなく当時生きていたわけで、いろいろ想像できます。遺跡と
違い、生きているところに魅力を感じます。
--今後の抱負は?
これまでも県の助成で冊子「近江の巨木探訪」を作りましたが、県内全域の冊子を完成させたい。あとは、巨木を通じて、自然や環境に関心を持ってもらえれば。県は91年に県内29の巨木を自然記念物に指定しました
が、そのいくつかは伐採されたり、枯れるなどしています。巨木は「緑の文化財」だと思いますし、歴史の生き証人。特に、子どもたちに関心を持ってもらいたいですね。
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■提言
巨木は「緑の文化財」。何百年も生きていることに尊敬の念を感じ、歴史の生き証人である巨木を守るのは、今の時代に生きる私たちの役目。未来をつくる子どもたちにも意義を伝えていきたい。
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■人物略歴
◇つじ・ひろあき
1940年7月、奈良県生まれ。00年に会社員を定年退職後、草津市の県レイカディア大学に入り、01年に「滋賀の名木を訪ねる会」を結成し、会長に就任。
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