ID 5990
登録日 2008年 1月12日
タイトル
消えゆく緑の遺産
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新聞名
八重山毎日オンライン
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元URL.
http://www.y-mainichi.co.jp/news/10229/
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元urltop:
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写真:
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石垣小学校南側にある宮鳥御嶽で、県指定天然記念物のリュウキュウチシャノキや、その周辺にそびえ立っていたクワノハエノキなどの巨木が生育不良で枯死し、境内から緑が失われつつある。原因として「
南根腐病」や土壌障害などが指摘されているが、このままだと、境内から樹木が消え、御嶽特有の神聖なたたずまいがなくなりかねない。とくに天然記念物のリュウキュウチシャノキは、石垣島が北限とされる貴重な樹種
だけに、「後継木」を植え、次世代に語り継ぐことも必要だ。(南風原英和記者)
リュウキュウチシャノキは、オーストラリアから紅頭嶼(こうとうしょ=蘭嶼)まで分布し、台湾を飛び越して、与那国や西表、石垣島の海岸林に生育するムラサキ科の常緑高木 宮鳥御嶽の拝殿東側と後方のイビ内に合わせて3本あり、「沖縄の植物分布を考えるうえで保護すべき貴重な樹木」として、1959(昭和34)年に県の天然記念物に指定され、保護育成が図られてきた ところが、数年前から拝殿東側にあるチシャノキの樹勢の衰えが目立ち、市教育委員会文化課では樹医に診断してもらい、施肥などをして、回復を見守ったが、昨年初め、枯死した その後、イビの中にあったチシャノキ2本のうち、1本も枯れ、相次ぐ大型台風の接近で他の樹木の倒木被害も広がっている かつて、石垣小学校から宮鳥御嶽までの一帯は、数多くの樹木が鎮守の森を形成していたともいわれる
御嶽の自然環境を維持するために、失われた木の「後継木」も検討すべき課題だ。これについて県教委文化課の浜口寿夫(ひさお)天然記念物担当員は「このままにしておくのは忍びない。天然記念物の話は別問題として
、御嶽の土地所有者と市教委、県の三者で話し合えば後継木を植えることも可能」という。天然記念物を維持管理している市教委文化課の下地傑係長も「人為的に植えると、天然記念物にはならないが、いい考えだと思
う」と話す 御嶽を管理する石垣字会の玻座真武会長は「お宮らしい雰囲気を守るために、なんとかしなくてはいけない」と姿を消す木々に憂慮している 隣接する石垣小の花城正美校長も、リュウキュウチシャノキの行く末を最も懸念している1人。同校のふるさと学習館西側に唯一生育しているチシャノキから苗木が取れないか、挿し木や取り木を試みており、「成功した
ら、御嶽の植相を復元できるよう、地域の青年会に植樹作業を働きかけたい」と話した
文化財(天然記念物)は保護育成ばかりが目的ではない。失われた貴重な植物や周辺の自然環境を守り育て、次の世代に伝えるのも文化財保護行政の役割といえよう。
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