ID 5382
登録日 2007年 11月16日
タイトル
木々の秋
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新聞名
四国新聞
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元URL.
http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/column/article.aspx?id=20071116000095
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元urltop:
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写真:
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街路樹が美しく色付いている。サクラが咲き誇る春も初々しい若葉の5月もいいけれど、さまざまな色が散りばめられた今の季節が一番好きという人は少なくない
木の種類によって葉の形は異なる。子どもが絵に描いたような葉もあれば、先がいくつも分かれていたり、縁がギザギザになっていたりする。軸が長い葉、毛の生えた葉、厚みのある葉、虫に食われた葉もある
それらがそれぞれ違う色に染まるのだ。炎のようなハナミズキ、朽ち葉色したケヤキ、渋い茶色のサクラ。常緑のクスノキさえも秋色に思える。山を見れば所々でカエデが赤や朱に染まっているし、まだ少し青みの残っ
たイチョウも、それはそれで味わい深い
木の種類どころか、根を同じくする一本の木の中でも、染まり具合は決して一様ではないのも面白い。それどころか一枚の葉の中でさえ微妙に違う。それゆえ紅葉や黄葉は、手に取っても遠くから眺めても楽しい
彼らは春から夏にかけて黙々と働いてきた。懸命に光合成に努めてきた。そうして厳しい冬が近付くと、自ら枝との間を遮断して水分や養分を行き来できなくし、散り落ちていく。ただ枯れていくわけでなく、次なる命のた
めにわが身をささげる
人も皆、秋を迎える。いつまでも生命力あふれる人、くすんだ人、渋さの漂う人。色を少しずつ変えながら、その人その人の色をにじませ、一つまた一つと歳を重ねる。人の秋もまた味わい深い
日脚が日に日に短くなっている。北からやってきた紅葉前線は、いま足早に山を駆け下りているところだ。人のあり方を指し示しながら、落葉の時に近付いていく。
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