鹿児島県指宿市大渡海岸にあった樹齢300年余のアコウの木が台風で倒れ、地元NPOが移植したのをきっかけに、沖縄と
深い縁のある木であることが分かり、沖縄と鹿児島のきずなを深めている。琉球からの江戸上り一行が、最初に上陸したのが大渡海岸にある番所「五人番」であったことから、県内芸能家が現地で「上り口説」の踊りを奉
納するなど、「五人番のアコウ」と名付けられた木を軸に、人の交流も生まれている。
藩制時代の薩琉の交流を見守り続けた「五人番のアコウ」は、2004年8月末の台風で倒木。波打ち際に生息する珍しい巨木であったことから、地元のNPO法人「縄文の森をつくろう会」が立ち上がり、行政や業者な
ど百人余が連携して同年9月4日に指宿港の太平次公園に移植した。
その後、つくろう会代表の永田和人さん(57)が琉球処分後の薩摩と琉球の関係や、山川港に琉球の使節船が千回近く来港していることなどアコウ周辺にまつわる史実を文献から調査。さらに、地元の古老からの聞き取
りで、首里城にあったアコウが運ばれてきた言い伝えがあるのが分かった。
ことし3月には沖縄芸能連盟の一行が鹿児島県を訪れ、「五人番のアコウ」の前で踊りを奉納する場面もあり、つくろう会と交流を深めた。
つくろう会は、移植3年を記念しアコウと山川港にまつわる歴史のドラマをまとめた冊子「五人番のアコウ顛末(てんまつ)記」を千部作り、関係者らに配布した。永田さんは「現代を生きるわたしたちが、海を隔てたきず
なをつなぎ、細くつながった線を太いものにしていきたい」と話した。
このページの公開日は1999年11月12日。最新更新日はです。