ID 4291
登録日 2007年 7月18日
タイトル
大弦小弦
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新聞名
沖縄タイムス
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元URL.
http://www.okinawatimes.co.jp/col/20070718m.html
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元urltop:
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写真:
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野村流といえば本島で普及している琉球古典音楽の流派だが、それが八重山にもあるということに気付いたのは、大学でサークル活動をしていたころだった。
八重山には八重山民謡しかないと思っていただけに驚いた。でも遠い記憶を呼び起こせば島の地謡として知られる人たちが「柳」や「天川」といった純然たる琉球古典音楽をいかにも誇らしげに歌い上げていた姿が鮮
やかに思い出される。
その野村流を八重山に初めて伝えたのが屋嘉宗業(一八六六―一九五八)という人。その一生をお孫さんが書いたのが十四日付読書面に載った『屋嘉宗業・三絃を響かせ』(屋嘉和子著、大山了己編集)だ。
開拓者の苦労がにじむ一冊であることはもちろんだが、書物というものは本題とは別の興味がわくものでもある。その一つが織物の話。大正五、六年ごろ石垣市では産業としての織物が盛んだったことが生き生きと語ら
れているのである。
記述に触れながら一つの疑問が解けた。幼いころ過ごした石垣島には那覇などに比べて桑の木が多かった。戦前、島の織物産業を原料面から支えたのは養蚕業であり戦後の桑の木はその名残だったのである。
宮良長包の名曲に『桑の実』がある。それを聞くと小学生のころ、木に登ってイチゴのような食感を味わった記憶がよみがえる。あのころ、そんな島の産業の歴史を知っていれば、あるいはもっと別の味がしたのかもし
れない。(
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