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ID 4021
登録日 2007年 6月 6日
タイトル
パリの屋根の下で】 マロニエが怖い
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新聞名
産経新聞
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元URL.
http://www.sankei.co.jp/kokusai/europe/070606/erp070606000.htm
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元urltop:
-リンク切れ-
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写真:
 
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ある日、クシャミが10回近く出て、目が猛烈にかゆくなったので空を見上げたら、輝く陽光の中で街路樹のマロニエの白い花が咲き乱れていた。
 花粉症に悩まされる身にすれば、マロニエの花は怖い。ソメイヨシノのようにせいぜい1週間の寿命ではなく、4月から5月にかけて、1カ月以上も咲き誇る。今年は開花期も早かったような気がする。
 マロニエは日本人にとってはパリやフランスの代名詞のような花である。が、当のフランス人のその開花への関心は薄いようにみえる。桜前線の移動が日本でニュースになることも、季節感に疎いフランス人には理解 し難いようで、今年は東京で桜が満開になった日のお祭り騒ぎを、仏民放テレビが夜8時のニュースで伝えたほどだ。
 もっとも、フランス人にとってもマロニエはフランスの春を代表する花には違いなく、「マロニエ」は新聞業界用語としても使用されている。フランス革命記念日の7月14日やクリスマス、ドゴール将軍が1940年にロン ドンからナチス・ドイツへのレジスタンスを呼びかけた6月18日、新学期など例年、繰り返される行事の記事は、「マロニエ」と呼ばれる。
 それにしても、不思議な花である。この花を初めて見たとき、大方の日本人はちょっとした衝撃を受けるのではなかろうか。最大30メートルに達するこの高い樹に咲く藤に似た花は空に向かって真っ直ぐに伸びている からだ。なぜ、かなり重そうな花房がニュートンの法則通り、垂れ下がっていないのか。何ごとにもまず反論し、抵抗するのが好きなフランス人の精神を代表しているかのようだ。
 バルカン半島を原産地とするマロニエがオスマン帝国や神聖ローマ帝国を経てフランスに初めて植樹されたのは1612年のことだ。王妃マリ・ド・メディシスがこの花を愛し、宮廷の庭園などに植えさせたといわれる。
 仏全土で公園や街路などに植えられている樹木約49万本のうちプラタナスが39%で最も多く、マロニエが16%でこれに次ぐ。パリ市では2001年、6400本を09年までに新たに植樹、市内の植樹の総数を計10万 本にすることを決めた。樹齢200年のマロニエも植え替え時期が来たものが多いそうだ。
 ある日、私のクシャミも目がかゆいのも止まったと思ったら、マロニエの花が消えて緑の大きな葉が生い茂っていた。フランス大統領選も終わってシラク時代からサルコジ時代に移っていた。
 フランスでは、今年は4月中旬に気温が上昇、夏服に衣替えする人も多かったのに、5月中旬からは朝晩8、9度の気温と雨が続き、フランス人は冬服に逆戻りした。どんなに肌寒くても6月には一斉に夏服に替わる日 本で生まれ育ったひとりとしては、平然と冬服を着る気にはなれない。
 ドイツ・ハイリゲンダムで6日、開幕する主要国首脳会議(サミット)でも地球温暖化が主要議題になるなど、誰もが地球が確実におかしくなっていると肌身で感じている今日このごろ、アレルギー体質を持つ者としては、 美しいが怖いマロニエの開花期間が気候変動に伴って長くなることなどないよう祈るのみだ..

このページの公開日は1999年11月12日。最新更新日はです。

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