ID 3709
登録日 2007年 5月 4日
タイトル
地方点描:共存の道
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新聞名
秋田魁新報
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元URL.
http://www.sakigake.jp/p/column/chihou.jsp?kc=20070505ay
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元urltop:
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写真:
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春光を浴びながら、満開の「桜のトンネル」の下を散策する気分は格別だった。ゴールデンウイーク前半の週末、湯沢市の雄物川沿いにある桜堤防に出掛けてみると、両脇に立ち並ぶソメイヨシノが枝いっぱ
いに花をつけていた。並木道には多くの見物客の姿があり、車はゆっくりと通過していく。当地出身の同僚の「湯沢の桜だったら雄物川堤防」という言葉に得心がいった。
しかし、花から幹に目を転じると、この桜の名所が「老木化」という問題に直面していることを実感させられる。樹齢約60年の古木の中には、枯れ枝が落ちたり、倒木したりするものも出てきている。
さらに国交省湯沢河川国道事務所が昨秋実施した調査で、根が腐食した樹木周辺を中心に堤防の著しい弱体化が判明した。堤防は河川施設等構造令で「盛土により築造するもの」と規定されており、そもそも植樹しな
いことが原則。堤防に張った木の根は強度を損なう「異物」なのだという。補強工事は不可避で、現状のままの維持は困難な状況だ。
それでも長年、市民に親しまれ、地域のシンボルにもなっていることから、同事務所と道路管理者の市、地域住民でつくる雄物川堤防桜愛護会の3者で、桜並木と堤防を共存させる方策を探っている。先例を見れば、宮
城県涌谷町のように堤防の片側の並木を残す形で共存を実現する道もある。同愛護会の佐藤虎蔵会長(84)も「片側だけになってもやむを得ない。名所として後世に残すことが大切」と受け止めている。
桜並木が姿を変えることに寂しさを感じるのは人情だが、堤防の機能が失われたままでいいわけもない。景観と安全をいかに両立させるか。行政と住民の協働の真価が問われている..