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ID 2950
登録日 2007年 3月 7日
タイトル
伯国開拓移民・関保三郎伝
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新聞名
サンパウロ新聞
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元URL.
http://www.spshimbun.com.br/content.cfm?DO_N_ID =15626
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元urltop:
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写真:
 
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保三郎は、豚を飼って自家用としていた。都合の良い日には、豚一頭を賭殺して、塩漬けや味噌漬けにして保存した。豚を骨から外して料理できるように処理する作業は、子供たちの仕事であった。保三郎 は豚の脚の部分を一本持って、馬に乗り親しい友人の家に行ってしまって、帰ってくるのは夜もおそくなってからだった。
 やはり移住地に住むよりは、ペレイラバレット市に住んだほうが組合の理事会に出席するのにも都合が良いし、子供たちの教育にも便利だとなって、いろいろと思案していたところに、親しくしていた元市長だったブラジ ル人が保三郎に三十五ヘクタールの彼が住んでいたシャッカラ(小農園)を買って欲しいと言ってきたので早速購入した。シャッカラにある家は、ペレイラバレット市で一番先に建てられたレンガ造りの住宅だった。部屋が 六つあり台所の中に井戸があって、広々とした家だった。住宅の周りはゆったりとしていて広く、黄色い果実をつけるカシュウナットの木とか、遠くから見れば桜のように薄桃色の花が咲き、冬には綿を撒き散らす綿の木(パ イネイラ)が二本家の入り口に植えてあった。赤い花を咲かせ、大きな豆の莢をぶら下げるフランボヤンの木や、年中花をさかせるブーゲンベリアの木が植わっていた。裏庭にはオレンジ、レモン、マンゴ、アボカド、大粒 で黒いブドウのような果実が木の幹や枝にぎっしりとつくジャボチカーバが植えてあった。シャッカラは町の中心から三キロばかり離れたところにあった。
 保三郎は、先々を考えて三回に分けて家を増築し改築もした。まず始めに三部屋の寝室を増築した。その次に食堂を広げ、ガラージを整備して、四台の車が入り、その奥にはバーベキュウができるようになっていた。
台所と食堂を境にした所には、三男の獣医の清己が大きな三段になっている水槽を作り、珍しい熱帯魚を飼っていた。この場所は誕生祝や祝祭日には、一家が集ってバベーキュウする場所だった。最後に保三郎の居間 と書斎を増築した。
 保三郎は、大工を呼んできて、一万羽養鶏を目指して鶏舎のを作った。木材は移住地の開墾時代に保存しておいた、アロエイラという硬くて重い木材で、大変長持ちする木であった。毎日保三郎と子供たちは鶏舎の屋 根に瓦を載せるのに忙しく働いた。
 悦子の下の敦子と清己と邦子の三人はペレイラバレットの学校で勉強して後はみな大学を卒業した。二女の容子はペレイラバレット市で雑貨商をしていた斉藤善治と結婚した。長男の陸郎は、チエテ移住地の一つであ ったオンゼ移住地の小坪睦子と結婚した。
 綿の収穫が始まると、保三郎はチエテ産業組合の製綿工場へかよった。組合の製綿工場の責任者でもあって、常務理事でもあったので、毎日が忙しかった。組合には購買部といって、日用品はもちろんのこと、肥料、農 薬、種子、農機具なぞを組合員に販売するかなり大きな店を出していた。最初のうちは主に組合員の子弟が働いていたが、後になって組合員の子弟は、サンパウロに出て大学に入る者が多くなり、人手不足を補うために 、町に住んでいた青年たちを雇用した。
 購買部であまり仕事の好きでないどちらかというとわがままな青年が、店の売り子として働いていた。その青年は組合員の評判が悪く、活発に仕事をしないので理事会で解雇した。ところが青年は理事会に恨みをもって 、理事たちを全員殺してやると言いはじめた。ブラジルではピストルは簡単に買うことができるし、身につけて歩くことができる。気の狂った者には凶器は禁物だが、この国の習慣であるから仕方が無い。
 青年は理事の一人である保三郎が、製綿工場の事務所に居ることに気がついたのだろう。青年は保三郎をピストルで狙撃した。その時保三郎は事務所の机に座って事務を執っていて、頭を上げた時、青年が事務所に 入って来るなり発砲した。一瞬保三郎は危険を感じて「何をする!」と大声で叫ぶと同時に発砲した。幸いにも、弾は半そでのシャツの袖の下側を打ち抜いて飛んだ。ピストルに撃たれた瞬間に、亡くなった母親が見えた。
「おっかさんが、あの時助けてくれたのだ」と保三郎がこの話が出る度に言ったものだった。
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このページの公開日は1999年11月12日。最新更新日はです。

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