ID 2817
登録日 2007年 2月20日
タイトル
啓翁桜「日本一」譲らぬ 山形県、超促成栽培を指導
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新聞名
河北新報
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元URL.
http://jyoho.kahoku.co.jp/member/news/2007/02/20070220t52027.htm
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元urltop:
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写真:
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山形県が、特産の早咲きの桜「啓翁桜」の生産拡大に力を入れている。一般家庭向け需要が高まっている半面、他県の追い上げが急で「産地間競争が激化している」と危機感を抱く。サクランボ、洋ナシのラ・
フランスとともに「日本一」の座を盤石にしたい山形県。市場で花類が品薄となる12月の出荷を狙い、「超促成栽培」の普及にも取り組み始めた。(山形総局・藤原陽)
<観賞用で需要増>
自生している啓翁桜は秋に休眠に入り、春の暖かさで目覚めて開花する。休眠状態の桜の枝を切り出し、温室で加温すると1、2月の厳冬期でも満開となる。山形県内では秋の寒さなど栽培条件が適していることから、
昭和40年代から促成栽培が行われてきた。
以前はディスプレー用や進物用などにニーズが限定されていたが、最近は一般家庭の観賞用として需要が増えている。東京の卸業者・大田花きの枝物担当者は「ピンク色の淡い花で春の季節感を先取りできる、と評判
が高まっている。年始の飾りとして、購入する人も増えている」と語る。同社は昨年、24万8000本の啓翁桜を扱ったが、うち山形産が19万本と8割を占めた。
<品質にばらつき>
しかし、王座は必ずしも安泰ではない。ここ数年、山形産の出荷量は豪雪の影響もあって年ごとに波があった。大田花きの担当者は「同じ山形県産でも、地域によって長さや太さなどに違いがある。規格、品質の統一を
進めることがブランドイメージ向上のために不可欠」と注文を付ける。
首都圏では群馬、茨城、埼玉各県で、東北でも青森、福島両県などで啓翁桜の栽培面積が徐々に拡大している。
山形県村山総合支庁は1月末、生産者約150人を集め、「啓翁桜フォーラム」を開いた。技術担当職員が弘前市や郡山市などの視察結果を報告し、「遊休地や転作地の有効活用を目的に、啓翁桜の栽培面積が拡大し
ている」と危機感をあおった。
<「販売面で有利」>
フォーラムでは、「12月出荷」の普及を目指し、生産者と研究者による栽培ポイントの解説も行われた。12月は市場で花が不足する「空白期」に当たることから需要拡大が見込まれ、価格が通常より高いからだ。県生
産技術課の佐藤裕則技術調整専門員も「早い時期に安定的に出荷できる産地は市場に大切にされ、有利に販売できる」とメリットを強調する。
年内出荷を実現するためには、冬眠時に切り出した枝をお湯や薬品に一定時間浸すことで強制的に休眠を破る必要がある。花が咲かなくなったり、変形したりするリスクが大きく、現在は栽培経験豊富な一部生産者だ
けが取り組んでいる。このため、12月の出荷量は全体の1割余りとみられる。
上山市三本松の農業山口秀夫さん(59)は約2ヘクタールで啓翁桜を栽培し、12月出荷の先駆者。今季は出荷量の半分を12月に回し、将来的には7割に高めるのが目標だ。山口さんは「こだわりを持って、他県の生
産者より先を行きたい」と意欲を燃やす。
[啓翁桜]シナオウトウとヒガンザクラの交配で生まれた。山形県内では2005年、165戸の農家が130ヘクタールで栽培し、102万本を出荷した。平均単価は1本150円前後。
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