ID : 1809
公開日 : 2006年 10月 8日
タイトル
広島の森林環境税 荒廃防止へ議論急ごう
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新聞名
中国新聞
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元URL.
http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh200610080105.html
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元urltop:
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写真:
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山の荒廃が深刻になっている。放っておくと、洪水を防ぐ力や、二酸化炭素を吸収して地球温暖化を緩和する機能が衰える。都市部の水源としての役割にも支障が出かねない。これらさまざまな山の公益的機能をよみがえらせようと、広島県は「森林環境税」の検討を始めた。
中国地方の他の四県は既に導入しており、広島県もやっと動いた形だ。荒廃が激しいのは戦後、スギやヒノキを植林した民有の人工林。価格が暴落して採算がとれなくなった上、高齢化と後継者難が追い打ちをかけ、放置林が増えている。所有者の責任だけでは対策の打ちようがないのが実態だ。
主目的は保全事業の財源確保である。県民に幅広く負担を求めることで、山の大切さを再認識してもらい、守り育てる意識を高める効果も期待できる。とはいえ、県民にとっては新たな税負担になる。使い道や税額を具体的に示して、県民合意を形成することが不可欠なのは言うまでもない。
県議会農林委員会では、早期導入を求める積極意見の半面、「定率減税の廃止や年金、医療で県民の負担増が続く中、理解が得られるのか」と慎重論も出た。全国で初めて二〇〇三年度に導入した高知県が、シンポジウムや懇談会を開いて県民の声を集めたのは参考になる。どんな事業をやればよいか、公募するのも一案だろう。
なぜ、新税かの説明も欠かせない。山口県や島根県は国庫補助の対象になりにくい事業の財源に重点配分し、一般財源で取り組む事業との違いが分かるように工夫している。阪神大震災を体験した兵庫県は、都市の防災緑化に力を入れる。福島県は市町村に交付するユニークな仕組みをつくっている。広島県も県内の地域実態に即した使途を打ち出してほしい。
税額も気掛かりだ。仮に山口、岡山、島根県と同じように個人が年間五百円、法人は均等割5%相当額を県民税に上乗せする方式なら、年に七―八億円の税収が見込める。県単独の林道整備予算の一・五倍に匹敵する額だ。それを投じた結果、どんな効果が出たのかを検証するシステムも作りたい。
山口県境の小瀬川、島根県へ流れ込む江の川など、他県にまたがる流域に着目した隣県連携事業も考え、道州制が実現した場合の共通税につなげたい。広島県は来年度導入も視野に入れている。それならなおさら、制度の骨格づくりと公表を急ぐべきだ。