ID : 14573
公開日 : 2009年 12月30日
タイトル
宮城の環境税/税額の根拠説明が不可欠
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新聞名
河北新報
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元URL.
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2009/12/20091230s01.htm
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写真:
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宮城県は、森林再生やクリーンエネルギー普及に充てる新税「みやぎ環境・エネルギー税(仮称)」を2011年4月に導入する方針を表明した。08年に新設した「みやぎ発展税」に続く独自課税だ。
世界不況により個人、法人ともに苦しい状況の中で新たな税負担を求めるのなら、慎重であってほしい。県民に税の必要性とその使い道、税額の根拠を明確に示さなければならない。
新税は、県民税の均等割に上乗せする超過課税方式で、年間の負担増は県民1人当たり1200円、法人は1社当たり2000~8万円となる。村井嘉浩知事は個人の負担額を「月100円とワンコインなら説明しやすく、協力していただけると考えた」と説明するが、10年度に所得税と住民税の扶養控除が一部廃止・縮減されたり、たばこ税率が引き上げられたりする中での増税感は重い。
宮城の森林面積は民有林、国有林合わせて約41万8000ヘクタールで、県の面積の57%を占める。林業が衰退していくのに伴い、多くが荒廃林となっており、このまま放置すれば大規模な災害につながるなど、県民生活に重大な影響を及ぼす懸念がある。ただ、幅広い層への課税に「国、県の林業政策失敗のつけ回し」との批判があるのも事実だ。
森林再生を目的とする地方の森林環境税は、03年に高知県で初めて取り入れられた。現在、30県で導入され、東北でも青森を除く4県で既に導入されている。宮城の取り組みはむしろ遅れている方だが、他県の例を見ると、税額は500~1000円がほとんどで、1200円は抜きん出ている。
宮城の森林環境税は、県の税制研究会が新財源創出を検討する過程で07年、みやぎ発展税とともに浮上した。自動車関連企業の誘致を進める富県戦略の一環として発展税が先行導入され、環境税は県民の負担感に配慮して先送りされてきた経緯がある。2期目に入った村井県政が、満を持して打ち出してきた新税ともいえる。
実施期間は5年間で、税収規模は年16億円と試算。施策展開として県は、森林環境整備と二酸化炭素(CO2)排出削減対策、希少野生生物の保護などを挙げる。これらの事業費が「5年間で100億円を超える」と説明され「そのうちの8割の財源を調達するため総合判断した」(県税務課)との根拠で、税額が算出されたようだ。
県によると、他県の使い道は森林保全や森林資源の有効活用がメーンだが、宮城は太陽光発電、電気自動車などクリーンエネルギーの普及、環境配慮型産業の育成を含む幅広い環境施策を視野に入れているため、負担が大きくなったという側面もあるという。
1月下旬まで県内各地で開かれている説明会では、「施策が総花的で分かりづらい」「行革を進めた上で提案すべきだ」など、住民の批判的な声が多いという。納税者に理解を深めてもらうためには、事業展開の具体案と、それに要する詳細な事業費の明示が欠かせない。