ID : 14188
公開日 : 2009年 12月 1日
タイトル
支局長からの手紙:佐用の炭プロジェクト
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/area/hyogo/news/20091130ddlk28070195000c.html
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元urltop:
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写真:
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今年8月の台風9号による豪雨で大きな被害を受けた佐用町で今月23日、あるプロジェクトが完了しました。被災した家屋の床下に炭を入れる活動です。
水害に遭った家屋はきれいに掃除しても、流入した汚泥のにおいがなかなか消えません。床下は湿気を含んだままで、家屋を傷める恐れもあります。炭プロジェクトは脱臭と除湿によって家屋を住みよい環境に戻すのが狙いです。
企画したのは、阪神大震災を機に設立された神戸の市民団体「被災地NGO恊働センター」。国内外の自然災害被災地での救援活動などを続けています。代表の村井雅清さん(59)は「震災では佐用町の方々にも助けていただいた。その恩返しです」と言います。
豪雨被害の直後から全国の市民団体や学校、企業などに炭の提供を呼びかけ、8月27日から被災家屋への炭入れを始めました。北は群馬県、南は鹿児島県の全国約60カ所から寄せられた竹炭や木炭は計15トンに達し、同センター提供、約50軒の家屋の床下に運び入れられました。
もちろん、炭の提供は無償。炭入れ作業もボランティアでした。阪神大震災で根付いた「助け合い」の精神が、「被災地に炭を」の合言葉とともに全国を駆け巡り、佐用町に結集したのです。
プロジェクトを通じて、村井さんは二つのことに気づきました。一つは、中学生や高校生が地域の人々と協力して炭焼きを行っているところが意外に多いことです。森林保全活動の一環で、森林整備の過程で出た間伐材を炭にして地域に還元しているのです。
もう一つは炭の別の効用です。今回、炭を提供してくれた長野県のNPOは04年の新潟県中越地震で支援活動をした際、炊き出しに炭が使われているのを見て、炭が災害時の燃料として有効なのに気づき、備蓄活動を進めていたそうです。「災害時に暖をとるための燃料にもなる。炭の使い道は結構多い」と、村井さんは思ったといいます。
さらに大きな力が炭にはありました。全国の人たちが佐用町を忘れていないというメッセージになったのです。ある女性は全国から届いた炭だと知らされると、「本当にありがたい」と涙を流したそうです。炭が被災者の心を癒やすのを見て、村井さんたちはプロジェクトを「床下からの見守り事業」と名付けました。
炭入れ作業は終了しましたが、炭のさまざまな効用を知った村井さんたちは今、森林保全と炭焼きを結びつけたプロジェクトを佐用町で進められないかと考えています。佐用の森が整備され、雇用も創出できるかも知れません。炭プロジェクトが、佐用町の復興につながればと願っています。