ID : 14100
公開日 : 2009年 11月22日
タイトル
ポスト京都:2009年・COP15 検証/2 温暖化防止に森林どう生かす
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/life/ecology/news/20091123ddm016040005000c.html
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元urltop:
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写真:
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京都議定書は、先進国が温室効果ガス削減目標を達成するために森林が吸収した二酸化炭素分を含めることを認めている。「森林吸収源」と呼ばれるルールだ。一方、13年以降の地球温暖化対策の枠組み交渉で、途上国で深刻化する森林伐採を食い止める新たな仕組みが議論されている。森林の価値をどう認めるのか、温暖化対策との関係で考えた。【大場あい、須田桃子】
■先進国の「吸収源」
京都議定書採択前の交渉で、日本は当初、目標達成に吸収源を含めることに反対した。算定方法が難しいほか、各国間の削減目標に差がなければ、日本のように国土の狭い国は、国土の広いカナダなどに比べて省エネによる削減負担が大きくなるからだ。
しかし、森林が果たす役割は重要として、欧米などが支持。90年以降に新規植林または再植林した森林での効果を吸収分として算定できることになった。対象となる新規植林は「少なくとも50年間森林でなかった土地を森林に転換すること」とし、森林は「面積0・05~1ヘクタール以上、樹高2~5メートル以上」と定義している。
また、間伐など手入れされた森林での吸収分は、各国の判断で取り入れたり、取り入れなかったりすることもできる。
日本の森林面積は国土の66%の2498万ヘクタール。01年に吸収源の細則を決定した際、90年の排出量の3・8%分の4767万トンを吸収減の上限とすることが認められた。この量は森林面積が日本の10倍以上のカナダとほぼ同じ。6%減が義務づけられた日本の削減目標の3分の2を賄える。ここまで認められた背景には、米国が01年に議定書を離脱したことがある。欧州などが、批准する国が足りずに議定書が発効しなくなることを懸念、日本に有利な数値になることを認め、批准を確実にするのを狙った。
だが、環境省によると、07年度の吸収量は二酸化炭素換算で4070万トン(森林4000万トン、都市緑化など70万トン)で、90年比3・2%にとどまる。政府が先月、国連気候変動枠組み条約事務局に提出した資料によると、今後も樹木の老化などで吸収量が減り、20年時点では2・9%になるという。
■途上国の減少対策
南米やアフリカなどでは食糧増産などのために森林が伐採されている。世界の温室効果ガス排出量の2割は森林減少が原因で、温暖化対策で途上国の森林問題を無視できない。
05年、コスタリカとパプアニューギニアは過去の傾向から予測した排出量と比較して、実際に森林減少を食い止めて排出を削減できれば、その差分を排出権として他国に売却できたり、資金供与を受けられることなどを盛り込んだ制度導入を提唱した。「途上国における森林減少・劣化防止による排出削減(REDD)」と呼ばれている。
コスタリカ政府によると、60年代以降、国が奨励して年間5万~6万ヘクタールの森林を伐採、国民1人あたりの伐採面積が世界一だった。しかし、80年代から森林保護や植林を強化し、国土の2割にまで減少した森を現在では5割までに回復させた。ホルヘ・ロドリゲス環境エネルギー相は「京都議定書の考え方では89年以前の森林管理や植林は評価されない。(ポスト京都議定書で現行の仕組みが継続されると)他国に先駆けて森を守ってきたコスタリカには不利だ」と提案の理由を語る。
途上国の中でもブラジルやインドネシアなどは森林が激減する一方、中国は植林が進み、00~05年の間に年400万ヘクタール以上増加した。REDDは当初、森林減少が著しい一部の途上国だけを対象に検討が始まったが、交渉過程で植林が活発な国も関心を示し始めた。
環境NGO(非政府組織)「FoEジャパン」の江原誠さんは「著しく森林減少していない国や、植林で吸収量増加・排出抑制を図る国が便乗し、議論が複雑化している。熱帯林の減少防止という本来の目的があいまいになりつつある」と懸念する。