ID : 14058
公開日 : 2009年 11月19日
タイトル
鷹巣農林高「森林バスターズ」活躍
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/akita/news/20091118-OYT8T01135.htm
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元urltop:
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写真:
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無償で間伐、山に活力 後継者がおらず、荒れ放題になった山林を無償で間伐し、再生させる「森林バスターズ」の活動が注目を浴びている。メンバーは、県立鷹巣農林高校森林環境科の3年生7人。昨年、バスターズを結成し、北秋田市の広報紙で希望を募ると予想を上回る応援要請が来た。「現場で経験を積んだ生徒たちは心身ともにたくましくなり、技術も向上した」。バスターズを率いる佐藤久和教諭(37)は活躍に目を細めている。(糸井裕哉)
「倒れるぞ、気をつけろ」。薄暗い林に生徒の野太い声が響き渡ると、ギシギシと大きな音を立てながら高さ約15メートルのスギがゆっくりと傾き始めた。「ドン」という鈍い音を上げて木が完全に倒れると、生徒たちは次の標的を求め、足早に林の奥へ歩みを進めていく。
三浦将喜さん(17)は「狙い通りに木を仕留めた時は最高の気分。隣の木に引っ掛かって倒れなかったり、まだ失敗も多いですけど」と声を弾ませる。簾内力さん(18)も「林業の楽しさを同年代の人に伝えたい」とはにかんだ。
バスターズが間伐しているのは、北秋田市坊沢の民有林。10アールほどの土地に樹木が密集し、林内に光が届かないため、先端部分にしか葉が生えていないスギばかりだ。
生徒たちは、ひょろ長い木や途中で曲がった木など、生育状況の優れないスギを見つけ出しては、チェーンソーを器用に使い、次々と切り倒していく。
佐藤教諭は「木と木の間隔が空いて光が差し込み、スギの葉量が増えれば、二酸化炭素が吸収でき、温暖化防止にも役立つ」と笑顔で語る。
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バスターズ誕生は昨年6月。林業への就職を希望する生徒たちが「山を整備できずに困っているお年寄りの役に立ちたい」と佐藤教諭に相談を持ちかけたことがきっかけだった。
佐藤教諭は当初、「間伐希望者が5人も集まれば御の字」と考えていたが、市の広報紙に募集を出すと、わずか2日で約30件の応募があった。
大半は、自力での間伐が不可能なお年寄りや、親から山林を受け継いだが、整備方法を全く知らない所有者だった。佐藤教諭は「間伐の需要がこんなに多いのかと驚いた」という。
間伐方法は生徒の発想を重視している。「紅葉を楽しめるように広葉樹を残そう」「自然林と同じ植生にしよう」などと、生徒自身がアイデアを出し、作業を組み立てる。佐藤教諭は現場で、チェーンソーの使い方など、技術的なアドバイスを細かく行うだけだ。
切り倒した木は、まきストーブの原料や木工の材料として利用しているが、今後は、木材チップに加工後、市内のバイオエタノール製造プラントに運び込む計画も立てているという。
今春、バスターズに間伐を依頼した北秋田市七日市の会社員細田秀作さん(53)は「スギ林を管理していた父が3年前に亡くなってから、土地は荒れ放題だった。生徒から『今後20年は手入れしなくても大丈夫』とお墨付きをもらい、父が一番感謝していると思う」と笑顔を見せた。
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バスターズは、昨年度は3件計1・8ヘクタール、今年度はこれまで2件計1・6ヘクタールの山林で間伐を実施。県北秋田地域振興局の花田綾子技師(33)は「高校生が間伐を請け負うのは、全国的にも珍しい。活動を通して地域全体に林業復興の機運を盛り上げてほしい」と期待を寄せる。
昨年度は、バスターズに参加した6人中4人が林業の道へ進み、今年度も7人中5人が林業関係企業への就職を決めた。「環境問題を詳しく学びたくなった」と大学進学を決めた生徒もいる。
佐藤教諭は「現場に強い生徒を育て、100年後も続く理想の森林を彼らと一緒に作り上げていきたい」と夢を膨らませている。