ID : 1507
公開日 : 2006年 8月19日
タイトル
「林業守れ」学生限定コンペ 若者が継ぐ伝統住宅 佐賀のNPO主催 今秋着工へ
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新聞名
西日本新聞
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元URL.
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/20060821/20060821_023.shtml
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元urltop:
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写真:
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日本伝統の建築技術を用い、かつ現代のライフスタイルにも適した家として、学生が提案した木造住宅が、今秋、佐賀県武雄市に建築される。林業を守るためにも若者に木の家の良さを伝えたいと、今年3月に佐賀市で初開催された「新・木造の家」設計コンペティションで、最優秀賞に輝いた作品を形にする。施主の募集まで手掛ける佐賀発のユニークなコンペの主催者は「木造建築を志す全国の若者の登竜門に育てたい」と、夢を膨らませている。
コンペを主催したのは同県旧脊振村(現神埼市)の特定非営利活動法人(NPO法人)「森林(もり)をつくろう」。同村で3代続く木材販売店に生まれた佐藤和歌子さん(26)が「山に携わる人々に誇りを取り戻してもらいたい」と、林業関係者を誘い昨年1月に設立した。
旧脊振村は、明治初めに約3000ヘクタールの国有林の払い下げを受け、村民総出で植林を進めてきた林業の村。しかし、国内の木材需要の8割を輸入材が占めるようになり、故郷の山も荒廃が目立ってきた。「森林維持のために木材を使ってもらうには」と考えた末、建築を学ぶ学生を対象にした設計コンペを思い立つ。
大学の建築関係学科などでは近年、コンクリート建築が研究テーマの主流で、木造建築を学ぶ場は限られる。柱と柱を横木で貫く伝統構法は消えつつあり、コンペ開催には「地元の木材を使い、伝統の技で家を建てるという文化を受け継ぐ若者を育てたい」という願いも込めた。
伝統構法を応募条件にしたが、全国から10組が参加。最優秀賞には「気配のある家」をテーマにした法政大大学院2年、栗原悠紀さん(25)の作品が選ばれた。間仕切りに佐賀県重要無形文化財の名尾和紙を使い、別々の部屋にいても家族同士が気配を感じられる。
栗原さんは「木造建築を勉強したかったが機会がなく、伝統構法が何かさえ知らなかった」と言うが、審査員は「素晴らしい作品が多く、若い芽があるという希望を持った」と評価。うち一級建築士前川康さん(64)の協力で栗原さんの作品の施主を募集したところ、若い夫婦を中心に18組も応募が相次いだ。
施主に決まった武雄市の会社員前田久光さん(42)一家は「コンペを長く続けるためにも自慢できるような家を建てて」とエールを送る。着工は11月ごろで、主に県産材を使用。佐藤さんは「木造建築に興味を持つ学生が後に続いてくれれば」と期待している。
第2回新・木造の家コンペも9月末まで応募を受け付けている。書類審査を経て、12月3日に佐賀市でプレゼンテーションによる最終審査を行う。森林をつくろう(佐藤さん)=0952(59)2018。