ID : 14005
公開日 : 2009年 11月16日
タイトル
林業政策/経済・環境のバランスを
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新聞名
世界日報
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元URL.
http://www.worldtimes.co.jp/syasetu/sh091116.htm
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元urltop:
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写真:
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わが国の森林は荒廃しつつあり、森林事業の停滞が続いている。民主党は、国産木材のシェアを50%に引き上げる目標を掲げた。本来、国民の財産である森林を、経済林、環境財として蘇らせるべきだ。
安価な木材輸入で衰退
日本の森林機能は民間調査機関の試算でも年間74兆円の貨幣価値があるが、木材に関して海外への依存度が非常に高い。国内の木材を使えば1億立方メートルほどの生産が可能だから、政策をシフトしていけば自
給体制がつくれる。しかし、現在はほとんど不可能だ。
林業の国内総生産(GDP)は5千億円弱。GDP全体の1%以下なので、社会的、経済的に非常に低く評価されている。ドイツは15兆円で自動車産業と同じ規模だ。日本の持つ技術力から15兆~20兆円の産業に育成
し、100万人ほどの雇用を創出できるとみられるが、今、政治が向かっているのはそういう方向ではない。森林に投資しなかった結果、生態系サービスが衰退して次世代に引き継げない状況だ。
林業衰退は、外国から安価な木材が流入し、国内材の需要が年々落ち込んでいることに起因するが、それに対する無策の長年のツケによる。またわが国の森林所有者は約200万人だが、実質的な林業家は20万人足
らずになった。
木材生産には、まず森の手入れから始まり、植林、下刈り、間伐、枝打ちなど地道な作業が不可欠だ。採算性を見込めず、林業への熱意は冷めており、森林は荒れるに任せている。人の手が入らない人工林の、無残な
荒廃が各地で進行している。
国土の4分の1、全森林面積の31%を占める国有林も同様だ。国有林は林野庁によって世界で唯一独立採算制で運営されているが、四半世紀も前から大幅な赤字が続いている。数次にわたる改善計画が実行された
が、悪化する一方だ。
森林の役割は大きく木材生産と国土保全の二つに区分けできる。その機能に応じた重点整備や、森林所有者の管理責任を明確化し、放置した場合には勧告を行うなどを前提に保全を行うことが大切だ。経済林として、
国産木材のシェアアップを図るとともに、環境財として水資源涵養かんよう、保水効果、大気浄化、土砂流失防止など公共機能を目的とした国有林対策を十分に施すことが重要になる。
日本の人工林の荒廃は林業近代化の遅れが主因だが、その克服とともに、併せて環境財としての重要性を世論に働き掛けることを怠ってはならない。
具体的には、間伐や針葉樹、広葉樹の混交林化の推進、国民参加の森林づくりのほか、機能低下した保安林の確保、NPOなどによる森林施業の奨励などを進めていくことだ。
土砂災害との関連銘記を
わが国では、毎年のように水害が起きるにもかかわらず、災害防止の観点から植林の大切さが啓蒙けいもうされることが少ない。森林が破壊されると、土地の肥沃ひよく度は徐々に落ち、表土の流出が盛んになる。統
計的にも、土砂災害の危険個所が増えていることと、森林の荒廃は無関係ではないことを銘記すべきだ。