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ID : 12087
公開日 : 2009年 6月15日
タイトル
森林もメタボ化…排ガス窒素「食べきれず」渓流に影響
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新聞名
朝日新聞
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元URL.
http://www.asahi.com/eco/OSK200906110150.html
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元urltop:
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写真:
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大都市周辺の渓流に高い濃度の窒素が流入していることが、群馬高専や大阪工業大などの調査でわかった。排ガスに含まれる窒素酸化物が長年降り注いだ結果、窒素を栄養分として吸収している森が窒素 飽和の状態になり、吸収しきれない窒素が川に流れ出ている可能性がある。この「森のメタボ化」による窒素流出は、森の衰退や湖などの水質悪化につながるおそれがあるとして、森林総合研究所(茨城県つくば市)も調 査に乗り出した。
 群馬高専の青井透教授(環境工学)らのグループが、首都圏の水源となる利根川の上流(群馬県安中市)で水質を計測したところ、窒素成分のひとつ、硝酸態窒素が1リットルあたり最大3.7ミリグラム、平均1.6ミリグ ラム検出された。湖沼などで定められている窒素の環境基準は同1ミリグラム以下。08年の1年分を積算すると、雨で降ってくるより1.5倍以上多い窒素が、森林から渓流に流れ出したことがわかった。
 調査地点周辺にはゴルフ場や畑など窒素の供給源がなく、山を越えた新潟県側や福島県側では濃度が3分の1から10分の1になることから、「首都圏から流れてくる自動車や工場の排ガスが原因だろう」と青井教授は みている。
 関西も同様だ。大阪工業大の駒井幸雄教授(水環境学)らが、六甲山最高峰の南斜面にあたる神戸市の住吉川上流の約38ヘクタールの森で雨水や渓流水を測定。02年から2年間で渓流の硝酸態窒素濃度は最大2.1 6ミリグラム、年間総計でも雨で降るより約2倍多い窒素の流出を確認した。
 08年7月から12月にかけて、流域に人家や田畑などの人為的な窒素の供給源がない大阪府内の渓流でも硝酸態窒素濃度を測った。その結果、212カ所のうち78カ所で1ミリグラムを超えていた。
 森林総研は、東京方面からの排ガスがぶつかる筑波山近くの実験林で、07年秋から窒素飽和が起きる仕組みや対策の研究を始めた。吉永秀一郎・土壌特性研究室長は「森から安全な水供給を続けることができるのか 、詳しく調べる必要がある」と言う。
 窒素飽和になると、根が弱って森の活力が失われ、生態系にも影響が出かねないという。ダムや湖沼などでは富栄養化が起き、プランクトンの異常発生などによる水質悪化を招くおそれがある。(添田孝史)
 〈水環境問題に詳しい国松孝男・滋賀県立大名誉教授(環境化学)の話〉 まだ排ガスが原因と決まったわけではないが、森から高い濃度の窒素が流れ出す原因を解明する必要がある。琵琶湖の周辺の森でも、濃度が 高い場所が見つかっている。森はどこでも「きれいな水の源」とはいいきれなくなってきた。
 〈窒素酸化物〉 石油などの燃料を燃やす際、空気中や燃料そのものに含まれる窒素が酸化されて発生する二酸化窒素など。排出された窒素酸化物は大気中で硝酸に変わり、雨や雪にとけ込んで地上に降る。化石燃 料の利用増加とともに森林に降る窒素の量が増え、北米の東海岸や欧州で80年代から窒素飽和が報告されている。
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