ID : 11927
公開日 : 2009年 6月 2日
タイトル
木炭で温暖化防止を目指す・小川真 日本バイオ炭普及会会長
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新聞名
日本経済新聞
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元URL.
http://eco.nikkei.co.jp/column/ekouma/article.aspx?id=MMECck000028052009
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元urltop:
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写真:
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間伐材や農業廃棄物を原料にしてつくる木炭(バイオ炭=bio
char)に世界的な注目が集まっている。砕いた炭を農地や林地に埋めれば土壌の性質を改良し生産性を高めるだけでなく、燃やせば二酸化炭素(CO2)として大気中に放出してしまうはずの炭素を地中に固定する効果
もあり、地球温暖化対策にもつながる。木炭の効能を長く研究してきた小川真・大阪工業大学客員教授は、温暖化対策も含め木炭利用の拡大を目指し企業や大学の研究者を集めて日本バイオ炭普及会を発足させた。木
炭をめぐる新たな動きや利用法について聞いた。
――木炭がなぜいま注目されるのですか。
小川真 日本バイオ炭普及会会長
「日本では昔から土壌を豊かにするのに炭を使うことはよく知られており、私自身も間伐材や竹材、農業廃棄物から炭をつくって農地や林地の土壌改良に使う研究に取り組んできた。ただなかなか経済的に引き合うもの
ではない」
「それが世界的に注目を集めるようになったのはここ2、3年のことだ。きっかけは米コーネル大学の農業土壌の専門家であるヨハネス・レーマン博士(准教授)とブラジル・アマゾン奥地のテラプレタという場所の出会い
からだ。レーマン博士がその地域の農業生産性が高いことを不思議に思い土壌を調べたところ炭の破片がたくさん見つかった」
「テラプラタは『黒い土』という意味だ。どうもそこにはかつて高い農業技術をもつ文明が存在し炭を土壌に混ぜて使っていたらしい。いまは滅びてしまい技術も伝えられていないが、土壌は改良された結果、周囲のや
せ土に比べて農業に適しているとみられる」
「レーマン博士がこの発見に驚いて関係者に呼びかけて火がつき、2007年には第1回の国際バイオ炭イニシアティブ(IBI)と名づけた国際学会を開くまでになった」
――米国の研究者が炭の効用を再発見したというわけですね。
「私は以前から炭の利用について論文も書き海外でも話していたので国際会議にも声がかかったのだが、欧米の動きが非常に急テンポで、日本もうかうかしていられないと思い国内で組織作りに乗り出した」
――欧米の動きが早いのはなぜですか。
炭を入れて菌をつけることで大きく育ったトマトの根(左、小川氏提供)
(クリックすると拡大します)
「温暖化対策につながると考え、大きな資本がバックについたかららしい。廃木材や農業廃棄物を炭にして土の中に埋めると土壌改良に役立つだけでなく炭素の固定化にもなる。燃やしてCO2にするより環境にはるか
にいい」
「その点は日本国内の研究者も10年ほど前から主張しているのだが、仮に炭を埋めることで排出量取引のクレジット(排出枠)を得る仕組みができたとしても国内ではなかなか引き合わない。木炭の原料となる材料を
集めてくるのにコストがかかるからだ」
「しかし米国の農業資本は違う。落花生や大豆の殻、サトウキビの絞りガラなどの廃棄物が山ほどある。燃やすしかなかった農業廃棄物から土壌改良剤がつくれ、さらにクレジットを得られれば二重、三重の利益になる。
手間ひまかけた日本の農地では炭を混ぜてもいまさらそれほど見違える土壌改良効果は出ないが、米国の粗放的な農地だと効果は大きいとみられる」