ID : 11231
公開日 : 2009年 4月 7日
タイトル
耕作放棄地 九州深刻 「復元困難」全国で最大 農水省初の調査
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新聞名
西日本新聞
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元URL.
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/88124
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元urltop:
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写真:
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農林水産省は7日、耕作放棄された農地について、初の全国実態調査結果を発表した。そのままでは耕作に使えない農地は約23万1000ヘクタールで、うち福岡市の約3倍に当たる約10万4700ヘクター
ルは森林・原野化し、耕作地として復元することが「著しく困難」と判断された。九州は、そのままでは使えない農地約5万6400ヘクタールのうち森林・原野化した農地が約2万8900ヘクタールだった。
森林・原野化した農地では、九州が全国の27.6%を占め、全国9地区中最大。都道府県別では、鹿児島県がそのままでは使えない農地(約2万400ヘクタール)、森林・原野化(約1万1100ヘクタール)とも全国最大
だった。
九州の農地荒廃が進む理由について、甲斐諭・中村学園大教授は(1)中山間地が多く、過疎・高齢化が進んでいる(2)大消費地からも遠く、農業経営が成り立たずに廃業が進んでいる‐などを指摘している。
今回の調査では、森林・原野化した約10万4700ヘクタールのうち、4分の1の約2万7000ヘクタールが農地法の適用外となる「非農地」とされていたことも分かった。対策の遅れで農地が消失する実態が浮き彫りに
なった。
一方、草刈りや整地をすれば約6万9000ヘクタールが、大規模な基盤整備を行えば約5万7000ヘクタールが、回復可能と判断された。同省は09年度予算で、耕作放棄地を整地する農家への新交付金(約206億円)
を設けており「食料自給率の回復に結び付けたい」としている。
調査は08年度に実施。農地がない地域などを除く1777の市町村や農業委員会が農業台帳を見ながら実態を把握した。同省は調査未了分を加えると、そのままでは耕作できない農地が全国で28万4000ヘクタール
、うち森林・原野化した農地が13万5000ヘクタールと推計している。森林・原野化した面積は08年度の耕作地463万ヘクタールの2.9%に当たる。
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●農地再生 道険しく
【解説】耕作放棄地をめぐる農林水産省の全国調査は、人手を加えれば利用できる耕作地を調べるのが目的。同省は食料自給率アップのため2011年度までに「耕作放棄地解消」を目指すが、現状のままでは耕作に使
えない農地のほぼ半分が既に森林・原野化して、耕作が著しく困難と判断され、厳しい現実を突きつけられた形だ。
耕作地は1961年の609万ヘクタールをピークに、08年は463万ヘクタールに減少した。05年の農林業センサスでは、農家に耕作の意思がない農地を含めた耕作放棄地は38万6000ヘクタールとされた。
九州では過疎・高齢化が進んだ「限界集落」も増えており、担い手対策が重い課題だが、今回の調査では、担い手の問題を解決しても、耕作地に復元できる農地は限られており、農地整備も急ぐ必要に迫られていること
がはっきりした。
国の対策を待てず独自の取り組みを始めた自治体もある。長崎県は07年度から、耕作放棄地の復旧に取り組む農家に10アール当たり3万円を支給する事業を開始。宮崎県も08年度から、耕作放棄地解消コーディネ
ーターを配置し、利用希望者の相談に乗る新規事業を始めた。国には早急な耕作地拡大策が求められる。(東京報道部・吉武和彦)
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▼耕作放棄地
農林水産省が5年ごとに実施する農林業センサスでは、農作物が過去1年以上作付けされず、農家が数年間のうちに作付けをする予定がないと回答した田畑や果樹園と定義。2005年調査では全国の耕地面積の約8
%を占めた。今回の実態調査は、耕作放棄地の荒廃状況を現地で確認、復旧の可能性によって分類している。