ID : 11103
公開日 : 2009年 4月 1日
タイトル
生きもの異変 温暖化の足音 スギの花粉量も増えている
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新聞名
MSN産経ニュース
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元URL.
http://sankei.jp.msn.com/science/science/090402/scn0904020328001-n1.htm
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写真:
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「近年はスギにとって、成長しやすい環境になっています」。財団法人「気象業務支援センター」の村山貢司さんは、スギ花粉の飛散量が爆発的に増え続けている現状の背景に、温暖化による気候の変化が
あるとみている。
温暖化による平均気温の上昇や日照時間の確保が、スギにとっての好材料となっているというのだ。
スギの英名は、ジャパニーズシダー。日本固有の針葉樹だ。2月上旬から4月下旬にかけて花粉を飛ばし、それが花粉症の主因となっている。
国立病院機構・相模原病院・臨床研究センター(神奈川県相模原市)では、1965(昭和40)年から同病院の屋上で、1平方センチ当たりの年間のスギ花粉飛散量の測定を続けている。
70年代まで4000個以上の年は、ほとんどなかったが、2000年代には5000個以上となる年が続き、2005(平成17)年は何と2万個を突破する記録的な年となった。
花粉症の原因植物は60種ほど知られている。欧米などではイネ科植物を原因とする花粉症が一般的だが、日本ではスギ花粉症が多い。昨年のデータでは、国民の26・5%が患者といわれている。
スギ花粉症は、1963(昭和38)年に初めて学会報告され、70年代後半から一般化していった。
スギは樹齢25~30年に達したあたりで花粉を付け始める。戦後の山林整備や林業振興を目的とした全国各地の人工林が、さかんに花粉を飛ばす熟年期を迎えているのだ。
村山さんは「輸入材に押されて、国産のスギ材を消費する林業のサイクルが止まってしまっている」と話す。林業の低迷が花粉増加につながっているのだ。
そうした中、温暖化が進んだことで梅雨期の雨の降り方に変化が起こり、花粉量をさらに増やす方向に作用しているという。
例えば、温暖化とともに6~7月の梅雨の天候が変化したことも見逃せない。昔の梅雨は、雨や曇りで太陽が顔を出さない日々が続いたが、近年はスコールのような集中豪雨と晴天を繰り返す気候に変化した。
「雨量は以前と変わらないけれど日照時間が増え、スギの花がたくさんできるようになっています」
スギの花粉の飛散量は、スギが花をつける前年の7月から8月中旬ごろまでの日照時間などによって決まるのだ。
スギにとって最適な気温は年平均15度くらいといわれている。「国内の平均気温があと1、2度上昇すれば最適となり、より花粉を増やす可能性がある」という。
スギと温暖化との関係には、痛しかゆしのジレンマも存在する。
「二酸化炭素は主要な温室効果ガス。スギは成長が速い植物なので、二酸化炭素の吸収率が高く、温暖化対策にはもってこいの樹木なのです」(村山さん)
温暖化と花粉症防止の両立を図るため、国などでは200ほどあるスギの品種中から、花粉が少ないタイプを選抜。大都市圏に影響を与えているスギ林で、少花粉品種への植え替えを進めている。
だが、スギの人工林面積は日本全土の12%を占めている。ほぼ同時期に大量に飛散するヒノキ科の花粉を含めると、2050年には花粉の飛散量が1・6倍、患者数は1・4倍にまで増えそうな見通しだ。村山さんの行っ
た試算である。