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ID : 11016
公開日 : 2009年 3月25日
タイトル
“無垢の木”の住宅の魅力を伝えるために
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新聞名
Business Media
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元URL.
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0903/26/news004.html
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元urltop:
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写真:
  木材業界の記事です
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木材と接着剤から作られている合板などの木材製品に対して、木を切ったり削ったりしただけの「無垢の木」。古来、日本人はずっと無垢の木の家屋に住んでいたのに、戦後高嶺の花になった。売り手は「買い 手がいない」「流通が複雑でコスト高」「扱いにくい」と言う。買い手は「どこで買えばいいか分からない」「高いから自分にはムリ」と言う。その結果、日本には規格型住宅ばかりが増えることとなった。
単なるモノ売りをしてはいけない

木童の木原巌社長
 そんな状況を打破しようと1994年、国産の無垢の木をクルマに載せ、建築事務所や工務店への営業を始めた男がいた。それが木童(こどう)の木原巌社長だった。
 しかし、どこに行ってもまったく売れなかった。ある時、クルマのバックミラーに映る自分の顔をふと見ると、そこには悲壮な顔をした「売り込み屋」がいた。はっと気付いた、「俺はモノ売りをしていた。違うんだ。俺の夢 は林業を再生し、国産材の家を日本に増やすことなんだ」
 それからはスーツを脱ぎ、その代わりにジーンズとトレーナーを身に付け、リュックを背負った。そして、セールストークは止めて、木材の作り手の想いを伝えだした。それから15年間、400棟以上の木造住宅のコーディ ネートを手掛けてきた。
 新宿オペラシティ1階にある木童のショールームにうかがい、「15年経って楽になりましたか?」と尋ねると、「いや今でも苦しいですよ。軌道に乗れば乗ったでその時々、苦しいものです」と木原氏は答えた。
みんな木のことを知らなくなってしまった
 木童を立ち上げる前は、木材の塗料販売の営業マンだった木原さん。全国の材木産地への営業で、北から南までどこにも地域材があることに気付いた。だが、実際に住宅に使われるのは8割以上が輸入材であるため 、どの産地も廃れていた。
 材木屋と言えば昔は地域の名士で、家を造りたいという人に材木を分け、大工を紹介し、建築資金面でも融通を利かせてくれた地元の“旦那衆”だった。だが、旦那衆の時代は終わり、輸入材に押し出されるのと時を同 じくして、材木屋は商売下手になった。
 「材木屋はみんな商売下手だと思いました。木を安く売ろうとしかしない。なぜなら木のことを知らないから、(適正価格で)売れないんですよ」
 「近所の工務店の店頭を見てください」と木原さんは言う。『ガス器具』『流し台』『アルミサッシ』『照明器具』……そんな看板がいくつも出ている。「彼らはいったい何屋なんでしょうか?」
 工務店も大工も建築事務所も木のことを知らない。「それならもっと木のことを広めてやろう」、そう考えて脱サラ起業した。   山ごとに木材を知り、割れのない材木を開発する
 木童の新宿のショールームにはずらりとサンプル材が並んでいる。杉だけでも全国には30種類以上の地域材があり、その植林形態で床に向くか、壁に向くか、あるいは屋根に向くかが変わってくる。だから、「山を見な さい、なぜそこで林業が発達したか歴史を知りなさい」と木原さんは木童のスタッフに言う。

 ショールームにある梁材の画像、まん中の割れが見えるだろうか。開放系のビル空間の空調は過酷なため、サンプル材が割れることもある。しかし、それを隠さずに木の特性を説明し、なおかつ一般住宅では絶対に 割れないようにする乾燥技術も同社は開発した。

 木材乾燥には人工乾燥と自然乾燥があるが、枝を払って山の斜面で何カ月も自然乾燥できるケースは少ない。機械での人工乾燥を導入する方が、費用対効果では理にかなう。しかし、木材には真の意味で“乾燥マニ ュアル”というものが存在しない。高温乾燥、蒸気加熱、燻煙(くんえん)などさまざまな手法があるが、地域材によってやり方が異なる。1つの答えがない世界なのだ。だから木童ではいくつかの木材に絞って、割れない 乾燥技術研究をしている。
 ちなみにショールームのミーティングスペースは天然木で設計され、土足厳禁。木の床だと日本人は靴を脱ぎたくなる。足の裏で木を感じるのが気持ちいい。

木童が支持される理由
 木童は建築家や工務店、そして施主であるユーザーの真ん中に立つ存在。「どんなライフスタイルで住みたいか」をユーザーから聞き、家造りに求めるものをつかんで適切な工務店や建築家を紹介し、ぴったりの木材 を選定する。施工中も要所要所で立ち会ってくれる。だから、本当の木の家を建てたい人が木童を頼って続々とやってくる。
 大手住宅メーカーでは坪単価29万8000円などとうたう例も出ているが、木童の木の家の価格はその倍以上となる。以前は「モノは良いけど高い」と言われた。実績が付いてくると、顧客からは「それほど高くない」「高い けれどいい」という評価になってきた。だが、この建築不況でどうなるのか?
 「今は『ローコストで無垢の木の住宅を建てたい』という声に応えようとしています」
 木童でもコストを抑えた需要に応える方法は検討している。キーワードは“減築”だ。団塊世代にとっては、息子が独立し娘も去ると、従来の4DK住宅は不要になる。そうなると、部屋を減らして、1部屋の間取りを大きく した2DKに建て替えたい。美しい無垢の木も使いたい。一戸建てだけでなく、マンションでもそんな需要が増えているという。
 もう1つのキーワードは“共存共栄”。多くの林業者が木童を慕うが、それは木原さんが一度も値切ったことはないからだ。どうすれば経営が成り立ち林業が受け継がれるかを念頭に置いて、その上でどうすれば安く提供 できるかを考えようという姿勢。林業者も作り手もユーザーも、みんなが喜ぶことを目指して事業をやってきた。
住まいとともに美しく滅びていく
 建ててから、買ってから後悔するのが住宅と言われる。住みだしてから不満が募り、そのうち「もうムリだよね」とあきらめて戸棚の奥に不満をしまい込む。ホルムアルデヒドなどユーザーが不健康になる住宅を提供して きた住宅業界は言語道断だし、昨今言われる“200年住宅”にしても、日本人の美意識とはどこかズレているような気がする。
 ユーザーの美意識とは、「住まいとともに美しく滅びていくことだ」と私は思う。家も人と同じように、美しく古びていくのがいい。無垢の木の住宅の素晴らしさは、美しく古びてゆく木と一緒に生きられること、木を手入れし 、古びる変化を楽しみつつ暮らせることなのだ
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