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高校生が、森林とかかわりながら生きる「森の名手・名人」を訪ね、知恵や技術、人生を取材し、発表し合う「森の聞き書き甲子園」に、塩尻志学館高校2年の山本実奈さん(17)=諏訪市岡村2=が出場する。
県内を代表する林業家の保科孫恵さん(79)=伊那市長谷=から、森づくりへの情熱や課題などを聞き取った山本さん。「同世代を含めて多くの人に、林業の実態や大切さを伝えたい」と執筆を続けている。
聞き書き甲子園は、文部科学省や林野庁などでつくる実行委員会が主催し、今年度で7回目。公募で選ばれた全国100人の高校生が、木こり、炭焼き、船大工など、森林に関わる分野で技術や経験を引き継ぐ人を訪ね
、見聞きしたことをリポートにまとめる。
昨年度の大会に出場し、富山県の紙すき名人を取材した兄の活動を見て、「興味が沸いた」と山本さん。参加動機をつづった作文を提出し「予選」突破を果たすと、研修会を経て、10月下旬から取材活動を始めた。
60年にわたって林業に携わり、徹底した密度管理で大径材を生産する名人だ。約60ヘクタールの所有林に足を踏み入れた山本さんは「1本1本の木は太く、下草が適度に刈られていた。こんなきれいな山があるのか
と驚きました」と感じたという。
樹木の病気は、海外からもたらされたという先入観を持っていたが、取材を通じ、日本から世界に広がった樹病があることを知った。地元・諏訪で山肌が崩れ、土石流が発生した2006年7月の豪雨災害。「針葉樹だか
らいけないのではない。手入れをしていれば起きなかった」と保科さんから言われ、森林整備の必要性を感じた。
出場高校生のリポートは冊子化し、来年3月に都内で開くフォーラムで配布。関係機関のホームページなどでも公表する。録音テープに記録された名人の言葉は約2万3000字。これを6000字以内にまとめる作業を
進行中だ。
「保科さんが『林業は100年の計』と説いていたのが印象に残る。何十年先を見据えた仕事のため、若い人をなかなか勧誘できず、寂しいとも語っていた」。後継者不足の問題を最も重く受け止めた。
保科さんは「ゼロからのスタートだったが、一生懸命取り組んでいた」と高校生ライターの姿勢を評価し、「若い力と視点によって、森づくりや国土を守る風を吹かせてくれればありがたい」と期待を寄せている。++/div+
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