ID : 9479
公開日 : 2008年 11月25日
タイトル
九州森林の日 法令順守の徹底からとは
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新聞名
西日本新聞
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元URL.
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/61532
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元urltop:
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写真:
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今月の第2日曜日は「九州森林の日」だった。ご存じだったろうか。
今年5月、九州7県の知事と林野庁九州森林管理局長が連名で「九州の森(も)林(り)づくりに関する共同宣言」を出した。
九州全土の63%を占める森林を守り育てながら林業や農山村の振興を図る。美しい森林づくりのために「九州はひとつ」で取り組む決意を示したものだった。
この共同宣言に盛り込まれたのが「九州森林の日創設」だった。だから、今年からである。それを記念して、この日を中心に九州各地で植樹や自然観察会、シンポジウムなどが行われた。
これまで森林や林業について一般の関心が高かったとは言い難い。より多くの人に現状を知ってもらうため、こうした日を設けて集中的に情報発信していくことは有効だ。九州森林の日が定着するように今後も工夫して
いってもらいたい。
ところで、あらためて共同宣言を読むと、行動方針の1つの「九州材の利用推進」の中に合法木材(合法性が証明された木材)の流通促進に取り組むとある。
森林の伐採には、森林法に基づき、水源保全や防災などの保安林の場合は都道府県の許可が、保安林ではない普通林の場合は市町村に届け出が必要だ。
実はちょっと前までこれが守られていなかったのである。それが大規模な山林の伐採後に山を丸裸のまま放置する「再造林放棄地」を増やす一因になった。
しかも無許可・無届けのために行政もどのくらい放棄地が広がっているのかなど実態把握が難しかったという。
だから、九州がひとつになった美しい森林づくりの第一歩は法令順守の徹底だった。「九州連合合法木材流通方針」などを定め、各県の物品調達でも「合法木材」のみ購入するように申し合わせた。
無届け伐採などが横行した主な理由として、都道府県知事から市町村長にその権限を移した森林法改正があるとの声がある。市町村では林政の専門職員などを養成する余裕も時間もない。そこで、監視の目を厳しく
といっても難しい。
一方、放棄地増加には、木材価格がまだ低くて森林所有者が再造林しようという資金も意欲も出てこない現実がある。
こうした問題をどう克服していくか。九州森林の日制定記念の森林・林業再生シンポジウムが大分県別府市であった。
北海道では道と市町村が協定を結び、連携して資源管理に取り組もうとしている。宮城県では木材生産団体と購入企業がそれぞれ一定額を出して、森林所有者の再造林を助成する事業が始まった。
こうした事例とともに、地元代表として日田市森林組合から林業の持続と環境保全を調和させる「成熟した循環林業」を目指す取り組みが報告された。
地道だが、意欲的な試みが各地で始まっている。森林・林業再生に力を尽くす人々がいる。こうした情報を広く発信する機会をもっとつくるべきだろう。