ID : 8668
公開日 : 2008年 8月31日
タイトル
悠久の時を刻む「神の手」 宮崎県五ヶ瀬町 祇園の大ヒノキ
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新聞名
MSN産経
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元URL.
http://sankei.jp.msn.com/life/environment/080901/env0809010828001-n1.htm
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写真:
写真が掲載されていました
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うっそうと茂った杉林の中に、1本の異形の巨木が圧倒的な存在感を示しながらそびえたっていた。
地中から突き出た「神の手」が何かをつかもうとしているようにも見える巨木は、天孫降臨伝説で知られる宮崎県高千穂町の隣に位置する五ヶ瀬町の「祇園の大ヒノキ」。推定樹齢は700~800年、胸回り7・8メートル、
高さは27メートルにも及ぶ。最大の特徴は、主幹が高さ2・5メートルほどのところから8本に枝分かれし、その枝幹が「われこそが主幹だ」とばかりに、競うように空に向かって伸びていることだ。
「大昔、この木が若かったころ、落雷の被害を受けてこのような形に成長したのでは」と話すのは、小さいころからこの木を見守ってきた奥村重治さん(70)。
もともとごく限られた集落の人だけが知っていたという「秘木」。かつては田畑の中にそびえていたが、40年ほど前に周辺で杉の植林が行われ、大ヒノキはより一層深いベールに包まれていった。
町役場がこの木の存在を知ったのは平成13年のこと。地域振興のため、文化遺産や景勝地を募集した際、奥村さんが応募したことがきっかけとなった。地域振興課も「町内にこんな“遺産”があったのか」と驚いたとい
う。この時、祇園山(1307メートル)のふもとにあることから「祇園の大ヒノキ」と名付けた。
昨年3月に設置された5つの看板や案内表示板も奥村さんが資金や木材を調達した。「観光地化されていないからこそ木の持つ本来の雰囲気を感じることができる。自然のままの姿を、1人でも多くの人が見に来てくれ
たら何よりもうれしい」と奥村さんは考える。
800年もの間、風雨に耐えながらひっそりとたくましく生きてきた巨木。これからも悠久の時間を刻んでいく。(