ID : 8532
公開日 : 2008年 8月18日
タイトル
針葉樹の皮はぎ被害深刻 スギやヒノキ、木材価格下落に追い打ち
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新聞名
毎日新聞
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元URL.
http://mainichi.jp/area/tochigi/news/20080818ddlk09040036000c.html
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元urltop:
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写真:
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◇不十分な間伐、下草不足背景に
スギやヒノキなど針葉樹の皮がクマにはがされる被害が目立っている。被害にあった木はいずれ枯れてしまうので、木材価格が下落している中で影響は大きい。5~6月に被害が集中するが、間伐が十分されず、エサ
となる下草が十分に伸びないことによる食料不足などが背景にあるようだ。【葛西大博】
◇甘~い樹液はおいしいな~
鹿沼市上久我のスギ・ヒノキの山では、赤く変色した木が点在する。県森林整備課の辻岡幹夫課長によると、クマによる被害だという。近くでスギを見ると、皮がはがされ、縦にスジが入っている。外皮の下には、形成
層と呼ばれる層があり、水分を含んでいて甘い。クマは皮をはぎ、鋭い歯でその層を擦り取り、樹液を飲む。皮が多くはがされると、木は水を吸い上げる力が弱る。葉は徐々に赤色に変化し、1~2年で完全に枯れてしま
う。
昨年度のクマによる皮はぎの被害は12ヘクタールに及び、シカによる被害(13ヘクタール)と同程度で、鹿沼や日光など5市1町で被害が確認されている。県自然環境課によると、クマは県西部を中心に推計で180
~495頭が生息する。県の保護管理計画で年間の捕獲数は45頭までと制限されており、捕獲数の増加は見込めない。辻岡課長は「昭和の時代には被害がなく、平成になってから出てきた」と話す。県がクマの被害統計
を取りだしたのは92(平成4)年からだ。
クマ被害の頻出について、宇都宮大の小金沢正昭教授(野生鳥獣管理学)は「果物が実る前の春はもともとクマのエサが少ないが、人工林の間伐が不十分で、光が入り込まずエサとなる下草が十分育たないため」と分析
する。狙われるのは太い木ばかりだが、細い木は葉が少なく水を吸い上げる力が弱いため樹液が十分ではないからだという。
戦後の復興期は木材需要が拡大し、昭和30年代には拡大造林政策が取られた。その時期に植林されたスギやヒノキが適齢を迎え、クマが食べやすい状況になっているのも一因とみられる。
木材価格は輸入材に押され、長期低落傾向だ。スギの中丸太1立方メートルあたりの落札価格は、78年は3万3700円だったが、今年1月では半値以下の1万3400円まで下落している。
県森林整備課によると、木にプラスチック製の防止帯を巻いたり、防獣ネットを張ることでクマの被害は防げる。国や県の購入費補助があるが、約4割は山林所有者が負担をするので、木材価格が低迷している中、所
有者はこれ以上の出費はコスト面から難しいのが現状だ。