ID : 7772
公開日 : 2008年 5月26日
タイトル
生態系守れ 森林破壊阻止へ連携、全国15団体がネットワーク
.
新聞名
毎日新聞
.
元URL.
http://mainichi.jp/area/hiroshima/news/20080525ddlk34040340000c.html
.
元urltop:
.
写真:
.
大規模林道やダムなどの開発、過剰な伐採で危機的な状況にある日本の天然林を守ろうと、全国の約15団体が3月、「日本森林生態系保護ネットワーク」を設立した。西中国山地国定公園内・細見谷渓畔(け
いはん)林(廿日市市吉和)の保護にも重点的に取り組むという。同ネット副代表で、環境NGO「広島フィールドミュージアム」の金井塚務会長(57)に設立の意義や方向性などについて聞いた。【宇城昇】
--新しいネットワーク設立の意味は。
◆北海道や沖縄では、大規模な天然林破壊が進行し、それを阻止するため訴訟になっている。全国組織で支援する必要性を感じた。これまでも「大規模林道問題全国ネットワーク」という連携があったが、林道建設を
止めるだけでなく、森林生態系の破壊を防ぐ。そのための調査・研究や国などと折衝をし、行政訴訟も辞さない。ネットワークには弁護士も加わっている。行政を監視し、問題点を告発する。森林保全を目的とした環境オ
ンブズマンを目指す。
--広島では、細見谷渓畔林を貫く幹線林道の計画がくすぶっています。
◆幹線林道の事業主体だった緑資源機構が廃止され、自治体が国の補助を受けて実施する事業になったが、県は事業続行を明言していない。林野庁が事業を再評価する「期中評価委員会」は一昨年、結論を先送りし
た。計画は中途半端な状況にあるが、森林保護に取り組む全国の関係者が、今後を注視している。
--以前から、国定公園の中でも、規制の厳しい「特別保護地区」への指定を求めてこられました。
◆西日本唯一といえる本州屈指の規模を誇る渓畔林で、貴重な生物の原生的ストックがあるからだ。生態系の頂点にあるツキノワグマの生息域の中核で、西中国山地の自然再生を図る際のモデルになる。細見谷上流
は人工林化されているが、広葉樹を入れて多層林にして、本来の豊かさを取り戻したい。消費型の観光地を目指すのではなく、渓畔林の生物多様性が持つ価値とその意味を多くの人に知ってほしい。
--今後の展開は。
◆自治体財政が厳しい折、本当に公益性がある事業なのか。通行量予測や費用対効果を徹底的に検証し、間違った事業ならば、うやむやな凍結で済ませるのではなく、中止を求めていく。危機に〓(ひん)している日本
の天然林を守るため、重要課題として地元の問題に力を入れたい。
==============
◆細見谷渓畔林・幹線林道
◇希少な動植物の宝庫
林業振興を目的に、国が77年に認可した大朝-鹿野線のうち、安芸太田町・二軒小屋と廿日市市・吉和西を結ぶ13・2キロ。既存の十方山林道を拡幅・舗装して整備する区間4・6キロが、細見谷渓畔林に沿うことにな
る。一帯は希少な動植物の宝庫で、日本生態学会は03年、建設中止を求める見解を発表した。廿日市市議会は06年8月、建設の是非を問うため住民団体が実施を求めた住民投票条例案を否決した。