ID : 7616
公開日 : 2008年 5月17日
タイトル
森林・林業白書/間伐を森林組合に集約
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新聞名
日本農業新聞
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元URL.
http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/modules/news1/article.php?storyid=546
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元urltop:
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写真:
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林業も作業受委託で人手不足を乗り切ろう――。どうやら今度の森林・林業白書の提案はそういうことらしい。地球温暖化防止対策と国産材の利用増を追い風に、林野庁はさまざまな間伐対策を打ち出してい
る。間伐材を使った建築材の活発な利用を前提とし、この際、小規模な森林所有者の間伐など森林施業を森林組合などに集約、低コスト化を進める考えだ。新たな担い手として森林組合に対する期待が大きい。
森林は材木を生産する林業基盤だけでなく、水源林、土砂災害の防止など多くの機能を持つ。このところ注目を集めるのが、炭酸ガスを吸収し地球温暖化を防ぐ機能だ。
京都議定書で日本は、1990年を基準にして、温室効果ガスの排出を6%削減することを約束した。ところが2006年は排出量が増え、実質12.6%分の削減が必要になっている。森林は炭酸ガスを吸収するから、間
伐などで適切に管理すれば、この内の3割、3.8%分を削減したと認められることになっている。森林への期待が大きい。
そのために、3.8%分に相当する、整備が不十分な330万ヘクタールの森林を、07~12年の6年間で整備する。1年当たり55万ヘクタールで、従来の整備水準を20万ヘクタール上回る。
しかし、私有の人工林は十分手入れができていない。全国の森林の6割、1450万ヘクタールが私有林でその4分の1は不在村地主が所有。また、林家92万戸(1ヘクタール以上所有)のうち、6割が3ヘクタール未満の
小規模層だ。高齢化と人手不足で植林、下刈り、間伐などの作業ができなくなっている。
山村は厳しいが、期待の芽が出ている。集成材、合板などの原料として国産利用が増えている。06年の自給率は、20.3%で前年を0.3ポイント上回った。資源ナショナリズムでロシアが輸出税を設けるなど新たな
動きもある。
こうした情勢の中、今年度予算でさまざまな補助事業を措置、新しい法律も作り、森林所有者が約3割の負担で間伐できるよう条件を整えた。その上で白書が描くシナリオは、森林組合や素材生産業者などの事業体が作
業を受託、林地を集約し、道を作り高性能機械を使い、低コストな林業経営を実現しようというもの。材木を有利販売する直接取引も進める。間伐の推進を契機とした受委託を、新たな担い手の育成につなげ、安い国産
材でも経営できる体質に転換する考えのようだ。
しかし、新たな担い手はいずれも経営が弱体だ。まず、国産材の利用を一層進めることが前提になろう。その上で新たな担い手の中心になるだろう森林組合の活動支援が必要だ。森林組合は800弱あるが、規模は小
さく職員も少ない。白書は、天皇杯を受けた京都府の日吉町森林組合などを紹介し、優良事例をモデルとして広げたいとしているが、相当てこ入れしないとシナリオの実現は難しい。