ID : 8352
公開日 : 2008年 7月24日
タイトル
《森は学校》鳥海山と人間? ブナ再生 輪広がる
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新聞名
読売新聞
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元URL.
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/akita/news/20080724-OYT8T00192.htm
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元urltop:
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写真:
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鳥海山の3合目、標高530メートルから600メートルの間で、鳥海ブルーラインの道路の脇に目をやると、高さ2メートルぐらいの若いブナの木をたくさん見ることができる。その数約2万5000本。「鳥海山に
ブナを植える会」が植えてきた。
会長の須田和夫さん(61)(にかほ市象潟町)は、「子供のころは5合目まで、山全体がブナでおおわれていました」と語る。
日本では戦後、家を建てるため木を必要とする人が急に増え、山に自然に生えているブナなどの天然林(てんねんりん)を切り倒し、その跡に、真っすぐに育ち、家を建てる木材に加工しやすいスギやヒノキなどの針葉
樹(しんようじゅ)を人の手で植えて人工林(じんこうりん)にする動きが広まった。国が持っている国有林を管理する林野庁が1954年から力を入れて行った「拡大造林政策(かくだいぞうりんせいさく)」だ。
鳥海山でも、このころから、特に2~4合目にかけて、もともと生えていたブナをどんどん切り、スギ林に変えていった。その結果、以前よりも台風や大雨のときに鉄砲水や土砂崩れが起きやすくなった。若いスギは土中
にしっかりと根を張らないため、土が流されやすくなったからだ。切ったまま放ったらかしにされた場所も多く、荒れた野原が鳥海山のあちこちに見られるようにもなった。
「これではいけない」と、須田さんらは1994年に、鳥海山にブナを植える会を作った。現在、会員は約600人。鳥海山からブナの実を拾ってきて、象潟町の畑にまく。芽が出てから5年近くかけて高さ1メートルほどに育
てる。その苗木を、毎年10月、鳥海山の荒れた野原に植林している。95年に初めて植えたブナは今、大きいもので高さ3メートル60センチにまで育った。
現在では、地元の企業や学校も植林に参加するなど、ブナ林を再生する取り組みは広がりつつある。須田さんは、「時間はかかるでしょうが、何世代にもわたって活動を引き継いでもらい、かつての美しいブナ林を取り
戻したいのです」と語る。