ID : 6464
公開日 : 2008年 2月24日
タイトル
CO2排出量、自治体で取引 新宿区と長野県伊那市
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新聞名
MSN産経ニュース
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元URL.
http://sankei.jp.msn.com/region/chubu/nagano/080224/ngn0802240300001-n1.htm
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写真:
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都心の東京都新宿区が約150キロ離れた長野県伊那市の森林の手入れをすることで、二酸化炭素(CO2)の吸収量を増やす事業に乗り出す。区内で排出するCO2の増加分と、伊那市での森林整備でのC
O2吸収量を相殺し、区の排出量の削減とする協定を結んだためだ。国と国の間では温室効果ガスの排出量をめぐる取引があるが、その自治体版ともいえる今回の試みは「きわめて珍しい」(林野庁)という。(村上智博
)
中山弘子・新宿区長は10日、友好都市・伊那市の小坂樫男市長と「地球環境保全協定」を交わした。協定には、区民が伊那市での森林体験学習などに参加し、森林保全に努め、CO2の吸収量の増加につなげることが
明記された。
新宿区では協定を踏まえ、平成21年度から5年にわたり、毎年30ヘクタールの間伐に取りかかる。適切に間伐をしないと、樹木の生長が鈍くなる。森林総合研究所(茨城県つくば市)の試算では、この事業でCO2の吸
収量が毎年約2000トン増えると見込まれている。
事業のもとは「カーボン・オフセット」と呼ばれるアイデア。日々の生活で排出するCO2を、CO2を吸収してくれる森林を育てることで補おうものだ。
新宿区は平成18年2月、独自の省エネルギー環境指針を策定し、CO2排出量を、22年度には2年度比で5%増に抑えるという目標を提示。区立公園の緑化など緑の整備に努めてきたが、15年度で27・7%増と効果
が出ず、「目標の実現にはより実効性がある発想を取り入れることが必要」と判断。伊那市での森林整備に着目した。
伊那市ではこれまで毎年30ヘクタールの市有林の間伐が行われているが、人手がないため、広大な森林全体の整備には数十年はかかるという。
事業では新宿区民がヒノキやアカマツなどの枝打ち作業や下草刈りを行う。切り出した間伐材は、区で使う印刷用紙や区内の公園の遊具などに活用する。こうした区民の手による一連の森林整備でかかる費用の一部
を、区は支援金として出す方針だ。
新宿区では「CO2削減の実効性が高く、区民に里山を守る大変さを学んでもらういい機会にもなる」と一石二鳥の効果に期待。伊那市も「区民との交流も広がり、街も活性化する」と歓迎している。
東洋大学の小川芳樹教授(環境経済システム)の話 「温暖化防止に向け、区としてできることをやった上で一歩踏み込んだ今回の取り組みは評価できる。同じコストをかけるなら、森林が少ない区内より、伊那市など
で広大な森林整備にあてれば、それだけ大きな削減効果が期待でき、区民にも市民にもアピールできる。同様に都心と地方が連携する試みが、各地で広がっていく可能性がある」