「森林吸収で3.8%削減」の中身とは――「マイナ
ス6%」への具体像
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新聞名
日本経済新聞
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元URL.
http://eco.nikkei.co.jp/column/article.aspx?id=20080214c1000c1
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元urltop:
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写真:
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最近、私のコラムにいくつもの質問が寄せられるようになり、非常に嬉しい限りだ。前回も読者にお答えする形でコラムを書いたが(「国産の木材はプラスチックと比べてなぜ環境に良いのか」参照)、「木育」に
関してさらなる質問が届いている。今回は「京都議定書の目標達成と森林吸収の関係」について基本的なご意見が来ているのでそれに答えたいと思う。
読者からのご意見は以下の通りである。
京都議定書の目標達成のため、各省が躍起になっている状況はよくわかるのですが、削減6%(90年比)のうちの3.8%が森林吸収になっています。しかし、森林事業が進められているという報道も聞きませんし、実際
どの程度の面積の森林が目標達成に必要なのかわかりません。チーム6%と言って、環境省は1人1日1kg運動を企業や国民に実施させようとしていますが、それとの関連が全く理解できません。狭い日本のどこに植林
をやるのでしょうか。もし実施するのであれば、きちんと国民に説明するべきだと思います。
非常に基本的な質問だが大変重要な内容だ。私自身も現在の国の政策のすべてを把握しているわけではないので、これを直接、林野庁に投げかけてみたところ、次のような文書による回答があった。長くなるが大切
なことなのでまずは紹介したい。
京都議定書では、日本の6%の削減目標のうち3.8%を森林吸収で担うこととしています。ただし、国内のすべての森林が吸収源の対象となっているわけではなく、国際的な運用ルールでは「森林の持つ諸機能を持続
的に発揮させるために、1990年以降、人の手を加えていること」がポイントとなっており、具体的には次の3つの行為が行われた森林を吸収源として算定することが認められています。
1) 新規植林:過去50年来森林がなかった土地に植林すること
2) 再植林:1990年時点で森林でなかった土地に植林すること
3) 森林経営:持続可能な方法で森林の多様な機能を十分に発揮するための一連の作業(森林の整備、管理、保全などの手入れ)を行うこと
このうち、1と2は日本ではごくわずかであり、主体は3になります。このため、国では、間伐の積極的な推進等による健全な森林の整備、伐採規制などをしている保安林や自然公園の適切な管理・保全のほか、これらを
進めるために必要な林業就業者の確保・育成、木材利用の推進、森林ボランティアや企業の方々など国民の幅広い森林づくり活動への参加を進めており、このことについては平成17年4月に閣議決定された「京都議定
書目標達成計画」にも明記されています。
なお、3.8%を森林吸収で分担するとの目標達成のためには、例えば間伐については平成19~24年の6年間に330万ha実施することとしています。
間伐の推進等の森林の整備を進めることは、地球温暖化防止だけでなく、土砂崩れを防ぐ、洪水や渇水を緩和する、木材を生産するなど、森林の持つ様々な機能を発揮することにもつながります。これらの機能のさら
なる発揮も含め、今後一層の森林の整備や保全を図るため、幅広い国民の理解と協力のもと「美しい森林づくり推進国民運動」を展開し、国民の皆様に森林づくりへ参加していただくこと、間伐材等の木材を生活の中で活
かしていただくこと、そして、山村を活き活きとした地域に再生していくことなどに取り組んでいます。
この運動を進めていくため、農林水産省では、地球温暖化防止を所管し「チームマイナス6%」の活動も進めている環境省のみならず、内閣官房、総務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省などと定期
的な会合を持ちつつ連携し、多くの国民の皆様の理解と協力を得られるよう努めているところです。
コスト面の問題から十分に実施されていなかったが、間伐は木材の成長に欠かせない作業だ。上記の「330万ヘクタールの間伐」の根拠として、林野庁の回答では次の図のようにまとめられている。