v10.0
- ID:
- 31510
- 年度:
- 2014
- 月日:
- 1009
- 見出し:
- [見つけた新刊絵本]ふたごのどんぐり(作:上野与志,絵:いしいつとむ,出版社:文研出版)
- 新聞名:
- 絵本のPictio
- 元URL:
- http://www.pictio.co.jp/museum/new-books/7159
- 写真・動画など:
- 【写真】
- 記事内容
- このところ、気温もぐっと下がり、秋らしくなってきました。今回は、秋にちなんだ絵本を紹介しましょう。題名は「ふたごのどんぐり」です。小さい頃、どんぐり拾いをした経験は、誰でもお持ちだと思いますが、どんぐりを拾うとき、どんぐりが二つくっついた実を拾った経験はないでしょうか。今回は、そんなどんぐりのお
話しです。
絵本「ふたごのどんぐり」 かしの木は、毎年、たくさんのどんぐりを実らせます。秋になると、どんぐりはかしの木の枝から落ちて、地面の上で冬を越します。
春になると芽を出し、ぐんぐん伸びてていって、小さな木になります。何年も経つと、大きなお母さんの木になります。そして、こんどはその木が、またたくさんのどんぐりを実らせるのです。
かしの木にはときどき、ぴったりくっついた、ふたごのどんぐりが生まれます。ある年のこと、ドンとグリという名前の、ふたごのどんぐりが生まれました。
頼もしいお兄ちゃんがドン、少し甘えん坊の弟がグリです。二人はなかがよく、ずっといっしょにいるんだと、約束していました。しかし、旅立ちの日が近づいていたのです……そう、ふたごのどんぐりが、大きく育ってふたごのかしの木になり、再びどんぐりを実らせるまでの、成長の物語なのです。
いしいつとむさんの絵は、やわらかい色づかいとタッチで、美しい日本の自然と四季の移り変わりを描き出しています。どんぐりの実には目鼻が描かれ、子どもたちが感情移入しやすくなっていますが、それ以外の動植物は、あまりデフィルメせずにリアルなフォルムで描かれていて、小さいお子さんにも分かりや
すいです。
その一方で、どんぐりを食べようと狙ってくるリスやカラス、またそのカラスに襲いかかるトンビたちも、目だけはいくぶん優しげに描かれています。絵本作品を、読者である子どもたちと、どのくらいの「距離」に置くかという、作家の細やかな気配りを感じ取れます。
どんぐりとは、ブナ科の木である、カシ・シイ・ナラ・ブナ・カシワ・クヌギなどの、木の実の総称です。中でもカシの実はとても硬く、その特徴がお話の中に上手く活かされています。ちなみにカシの木は、漢字で木へんに堅い(樫)と書くことからもわかるように、木の材質も非常に硬くて丈夫なため(ただし加工はしに
くいという難点はありますが)、家屋の欄間や敷居、鉄道の枕木、木橋、ハンマーやスコップの柄、木刀、和太鼓のばちなどに利用されています。
ふたごのどんぐりの成長を通して、生命のつながりを、そして、人間よりはるかに長く木の一生を通して、悠久のときの流れまでを、も感じることができるようです。
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